さくらんぼ
あのクッキーは家宝じゃ。ブンちゃんが半分俺にも寄越せとか言ってきたけどこればかりは譲れん。
「仕方ねえな、明日別のお菓子献上しろよぃ? 俺のお陰で若松と話せたんだから」
そうじゃ、この機会を逃しちゃいかん。
「若松さんにお礼のお菓子買わんと!」
「俺は?!」
「今日は帰るナリ!」
「おーい……はぁ、俺の話聞いちゃいねえな」
今日部活なくてラッキーじゃった。委員会活動日だからじゃけど、勿論委員会に行く余裕などなか。
というわけで、姉貴が好きなショップに直行じゃ。毎年誕生日にここの高いモン買わされるけど、今回ばかりは感謝せんといかんかも。あ……ブンちゃんに若松さんの好きなモン聞いとけば良かったが……まあ大丈夫じゃろ。
***
そして次の日。
「お、おはよう若松さん」
緊張で上ずる声。先に来ていたブンちゃんが目を丸くしてこっちを見た。
「おはよう仁王君。今日も朝練?」
「お、おん」
「朝から大変だね。私だったら授業中眠くなっちゃう」
俺はいつも爆睡じゃよ、とは言わない方がいいかの……。というか、そうじゃなくて、アレ、渡さんと!
「これ、昨日のお礼じゃけん」
あまりに不自然な流れ。心臓が爆発するんじゃなかってくらいドキドキして。いっそ告白の方が楽……イヤそれはない。視界に入るブンちゃんがどうにか笑いを堪えようとしているけど声が漏れている。し、死にたい! そして当の若松さんは。
「うわぁ、北海道限定チョコじゃん! 私これ大好きなんだよね。ありがとう」
わかった、若松さんは天使じゃ!
続
朝からお菓子は渡さない←
20110919
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