7


丸井の菓子を没収し、さぼる仁王を叱っている最中に赤也が飛び出してきてさらに怒鳴る。いつの間にか仁王は消え、何も知らずに来たジャッカルにこいつらを見張っていろと説教する。そんな俺を幸村や蓮二はそこらへんにしろと仲介に入る。
あれから一週間、何事もない至って平和な日々が続いていた。



「でも、良かったよ」
いつもの大騒ぎに収拾をつけ、レギュラーを練習に行かせると、幸村は俺の肩をばしっと叩く。本人は軽いつもりなのだろうが、中々に威力は凄い。
「? 何がだ」
「だって一ヶ月くらい、お前暗かったから。彼女に振られたのかなって」
「女などおらん!!!」
「知ってるよ、でも、良かった」

周りの奴らは、皆気づいていたのだろうか。だとしたら申し訳ないことをした。顔には出していないつもりだったが、上手くいかなかったらしい。
俺は仲間に恵まれている。もう何も起きないだろう。
幸村はそれ以上何も聞かずに「そこ、動きが悪い!」とコートに向かった。俺も急いで後に続く。明日からはテスト期間に入り、部活がしたくても出来なくなるのだ。油を売っている暇はない。





終了チャイムのぎりぎりまで粘り、終わるころには部員は皆くたくたで口数も減っていた。情けない。
一年生に片付けをさせるも、最後の鍵締めは俺が確認しなければならない。いつもは幸村も一緒にいるが、用事があるためチャイムと同時に帰らした。別に鍵締めくらい一人で出来る。
鍵を職員室に届け終えると、いつの間にか耳慣れた女子の声がかかった。

「あれ、真田君じゃない」
「忽那か。こんな遅くまでどうした?」
「友達と図書館でテスト勉強。明日から勉強期間だけど、私って皆より覚えが悪いから早くはじめないと大変なの」
そうは言うものの忽那の成績はかなり良い。つまり、日々の努力がきちんと成果になっているということだ。
「そうか、偉いな。赤也にお前の爪の垢でも飲ませたいくらいだ」
「ふふ、真田君はこんな時間まで部活? お疲れ様」
「ああ、何せ明日からやらせてもらえんからな。
ところで忽那、俺の貸したタオルは持っているか」

タオル。以前一緒に帰ったとき、俺が渡したもの。別に必要なものでもないが、なんとなく気になっていた。恐らく心の奥底で、以前持ち物が消えて行ったことへの警戒心が芽生えてしまっているのだろう。
「嘘、やだごめん、返すの忘れてた。……どうしよう、貸してくれたもの返してないなんて私……」
「いや、そこまで気にすることはない。お前には感謝しているし、何なら新品のタオルを買って渡したいくらいだ」
「駄目だよ、そんなの私が許せない。あのさ……今日取りにきてくれる?」
「だが……」
「すぐ渡せるし、これ以上長引かせたらますます迷惑がかかっちゃう。私が真田君の家に届けるのが筋だけど、私家知らないから……」

以前一緒に帰ったことがあるが、忽那の家は俺の帰り道にある。俺が行った方が話は早い。それに、すぐに日も沈むだろう。夜道を女一人に歩かせるのも危ない。
そう考えた俺は首を縦に振った。

「うむ、わかった」



20120401

[*prev] [next#]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -