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02



クリリンさんと言われた人がその髪の長いお兄さんに近寄る。
お父さんは危ない! みたいな事を言って止めたけどもう遅かった。
そのお兄さんは尻尾でクリリンさんの頬を叩く。
って尻尾!?

私はクリリンさんが家に減り込んでしまった事より、そっちの方が気になってずっとゆらゆらと動く尻尾に目を奪われていた。
何でこの人は尻尾があるの?
私達と一緒だ、茶色い私達と同じくらいの長さの尻尾。

そしてお父さんたちもそのお兄さんの尻尾を見てすごく驚いていた。
無理もなかった、私はお父さんと悟飯以外に尻尾が生えたヒトを見たことがないのだから。
私は訳がわからないまま、お父さんの足にひたすらピッタリとくっついていた。

「ふふふ……やっとこのオレの正体が分かったようだな」
「正体!? どういうことだ……!!」

お父さんは叫ぶ。
正体? 正体って何なの?

__私達って本当に地球人なの?__

私の頭がぐるんぐるんと回る中、お兄さんは声を荒げてお父さんに頭を打ったことがあるか? と言う。
なんでそんなに慌てているんだろう、私はその人の怒ったり蔑んだり慌てたり。
なんだか忙しい人だなぁと思った。

亀仙人さんはお父さんの事を語って、お兄さんは悔しそうに「くそ!」と言っていた。
お父さんは珍しく 相手を見て弱音を吐いている。
こんなお父さん初めてだ。
そんなにこの人は恐ろしいんだ、私は4歳ながらにそう直感できた。

「教えてやる! まず貴様はこの星の人間ではない!! 生まれは惑星ベジータ!! 誇り高き全宇宙一の強戦士族サイヤ人だ!!」

その言葉に皆が凍りつく。
私はやっぱり宇宙人なの?
お父さんは……宇宙人?
私は心が凍りついた様にその人の話を聞いていた。

「そしてこのオレは……貴様の兄ラディッツだ!!」

私の頭の中はますます混乱する。
お父さんのお兄さん?
分からない、でも私が宇宙人なはずない!

デタラメだ、デタラメなんだ。
私はそう自分に言い聞かせた。

「ご、ご、悟空のアニキだって!?」
「きょ、兄弟……!? う、うそ……!!」

お父さんとクリリンさんはデタラメだ! と言う。
そうだそうだ、デタラメなんだ。
クリリンさんの言うとおりだ。
宇宙船も無しにどうやってくるの!?

だって亀仙人さんが言っていたように、お父さんは赤ちゃんの頃拾われたんだから!
一人で操縦なんて出来るわけない。
でも私は、心の何処かでそんな気がしていたんじゃないかと叫ぶ。

その人の話はまだ続いた。
そのお兄さんが言うサイヤ人は所謂地上げをするのが仕事らしい。
でも星に住む人を全滅するなんて酷すぎる、お父さんも悟飯もとっても優しいもの。

そんな残虐なサイヤ人なはずなんかない。

クリリンさんはピッコロみたいだと言っていた。
ピッコロさんって誰だろう?
そんな事も思えないくらい、私の脳内は動揺していたんだ。

そしてこの人が言う月があるから幸いという言葉。
確かさっき亀仙人さんも月が満月がどうこう言っていた。
お父さんは良く分かっていないみたいだけど、月がどうなんだ?

「とぼけるな……月が真円を描く時こそが我々サイヤ人の本領を発揮できる時ではないか!」
『……あ……!』

そのラディッツと言う人は満月が見える頃に本領が発揮できると言った。
私の家はいつも早く寝るから満月見たことないなぁ、と改めて思う。
そしてクリリンさんたち三人は何か覚えがある様な顔をしていた。
……どういう事なんだろう、本領発揮って。

私はもやもやする黒いものを抑え込むようにブルマさんの足にひたすらしがみついた。

「オラはここで育った孫悟空だ!! とっとも帰れ!!」

「お父さん……」
「そうよそうよ!!」
「そういうことじゃ、過去はどうあれ今の孫悟空は誰よりも立派な地球人なんじゃ」
「悟空はな! この世界を救ったくらいなんだぞ!! 帰れ、帰れ!!」

皆が反論する。
やっぱりお父さんがこの地球を救ったのは本当だったんだ。
クリリンさんの言葉に、毎日聞かされたお父さんの武勇伝を今確信できた。

やっぱりお父さんすっごい人なんだ。
私はそう思うと無性に嬉しくなった。

するとそれを聞いても、その人は不気味に笑う。
この人、最低だ。お父さんとお母さんの事まで話に出すなんて。

「眼を覚ませカカロット!! 楽しいぞ!! サイヤ人の血が騒がんか!?」
「バカ言ってろ!! オラそんな事死んだって手を貸すもんかっ!!」

お父さん……。
私はお父さんのそんな姿を見て少し恐怖が和らいだ気がした。

「さっきから気になっていたのだが、後ろにいるのはお前の子じゃないか?」

ラディッツはそう言いながら私たちを見て、指を指す。
びくりとした。
ブルマさんは私たちを庇うように前に回る。
こ、怖い!!

お父さんは必死で言い訳をするが、尻尾が決め手だったようだ。
私たちの正体はラディッツに暴かれてしまった。
だから、だからなんだよ!!

するとラディッツは言う、お父さんがなかなか聞かないから代わりに私たちを連れて行くつもりなんだ。
私は察知にその状況を理解できた。
ラディッツは私たちの方に近寄り、お父さんは思いっきりお腹を蹴られて吹っ飛ばされてしまう。

お父さんに敵わない相手に勝てるわけがない。
私と悟飯は倒れるお父さんに駆け寄る。

「お父さーーん!!」
「お父さん!!」

「おっと」

つ、捕まっちゃった。
どうしようお父さん、ごめんなさい。
私は隣でわんわんと泣く悟飯を見て、どうしようもない気持ちに襲われた。
……う、うぅ。
泣きそうだ、ダメだ堪えなきゃ。

そう思っても涙は止まらない。
私は嗚咽を抑えるだけでいっぱいだった。
ぼろぼろと訳も分からなく流れる涙が情けなかった。

話しながらラディッツは私達をかかえたまま宙へ浮かぶ。

「わーおとうさーーん!!」
「おと、お……さん!! ひっく」

「ご、悟飯ーー!! 悟宙ーー!!」
「じゃあな! 明日を楽しみにしているぞ!! ふははははははっ!!」

私の虚しい叫び声は、空に消えてしまった。




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