年頃の男の子はあっと言う間にご飯を平らげてしまう。しかも、ここにいるのはただの年頃の男の子ではなく、一日中サッカーボールを追いかけて走り回っているスポーツ少年達だ。それはそれはよく食べる。

「いい匂いッスね〜これは間違いなくカレーの匂いッス!!先輩、先に一口…」
「そんなに泥だらけの人にはあげません!ほらほら、早く泥落としてきて!」
「は〜腹減った!!飯大盛りでよろしくな!」
「あ!?ちょっと円堂!そんな泥だらけの手でお皿触らないの!!シャワー浴びてきて!」
「わっ!そんなに押すなよ〜」
「あっ、ちょうどいいとこに風丸発見。この食い意地張った泥だらけの二人にシャワー浴びせてきてよ〜」
「あはは、マネージャーも大変だな。もちろん連れてくぜ。その代わり、カレーの肉多めでよろしく。」
「了解〜でも、早めに戻って来ないとなくなるからね。」
「あーっ!!風丸ずりぃぞ!!」
「ったく、円堂がマネージャーの仕事増やすのが悪いんだろ。」

食い意地の張った泥だらけの二人を気の利く風丸に任せ、少年達がシャワーで泥を落としている間に残りの具材達を切っていく。人参、じゃがいも、玉葱に牛肉。大量の具材をスパイスの効かせたルーでじっくりと煮込むと、イナズマジャパンマネージャー特性、具材ゴロゴロカレーの出来上がりである。食べ盛りの彼らに必要なのは味わい深いおしゃれなカレーではなく、量である。こうしてカレーが出来上がると、ちょうど炊き上がった特大炊飯器の蓋が次々と開けられ、お腹をすかせた少年達がそれぞれ皿に白米を大盛りに乗せて、マネージャーの待つカレー鍋の前へと押し寄せる。最初は白米もマネージャーが盛っていたのだが、そうするとマネージャーがご飯を食べる暇がいつになっても回って来ない為、白米はいつも彼らに任せるようになったのだ。まあ、健康管理の為に目金が一人一人の量をチェックしたりもしているのだが。

「''急がば回れ''でご飯は中盛りにしてきたから、今日は俺が一番乗りだね。''腹が減っては戦は出来ぬ''って事で、ルーは大盛りでよろしくね。」
「一番乗りおめでと。緑川はルー多め派ね〜なんか入れて欲しい具材とかある?一番乗りの特権で、なんでも聞いてあげよう。」
「うーん、じゃあじゃがいも多めがいいかな。お腹いっぱいになるし。」
「おお、了解〜今日多めに作ってるから、おかわりも来てね。」
「さんきゅ。次はご飯多めにしよっかな〜」
「それまで残ってるといいけどね…」

一番乗りの緑川を見送ると、次にやって来たのは綱海だった。炊飯器の前から慌ただしく走って来た彼は、白米がこれでもかというくらいに乗せられた皿を差し出してくる。

「マネージャー!!ルーと具材大盛りで!!!」
「いやいや綱海、そのご飯の量でルーも大盛りしたら絶対こぼれるって。」
「大丈夫だろ!それに、少しくらい溢れたっていいじゃねぇか!男はそんくらいがワイルドでいいだろ?」
「いやね、そのジャージにあんまり溢されると困るから!カレーはなかなか落ちないんだよ?」
「まあまあ、そんな細けぇことは気にしてねぇで、頼むぜ!!」
「…綱海のルー、具材人参だけにするね。」
「は!?なんでだよ!!俺なんかしたか!?」

声を上げる綱海をはいはいと押しやって次に並んでいた人物を確認すると、次の人物は先程牛乳多めのリクエストをしていた風丸だった。風丸はそこそこ多めの白米が盛られた皿を持っている。

「じゃ、さっきのリクエスト通りでよろしくな。」
「おっけー早めに来てくれたから、まだお肉も余裕あるよ。」
「サンキュ。マネージャーの作るカレーは、特に肉が柔らかくて絶品だからな。そういえば、ご飯もう無くなりそうだったけど大丈夫か?」
「ええっ!?嘘でしょ…おかわりの分も炊いたつもりだったのに……秋ちゃんにも伝えて来なきゃ…」
「いつも悪いな。後で片付けは手伝うから、先にいただいておくよ。」

そう言って去って行った風丸の背を見送って、''絶品''と言われて踊る心のまま、今度は慌ただしく秋の元へと向かう。ご飯はあとどのくらいあれば足りるだろう。相談する横目に移る、少年達が''うまい!''と言いながら浮かべる眩い笑顔が、マネージャーには最大のごちそうだ。
食堂に漂う食欲をそそるスパイスの香り。ゴロゴロ具材のルー。真っ白いご飯。今日の夕飯は、じっくり煮込んだカレーライス。


春を待たずに笑う

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