億光年先よりまだ向こう


第四次忍大戦以降、戦争が終結した十月の週末には毎週灯籠飛ばしが行われる。これは現在の七代目火影、うずまきナルトが考案したものだ。ナルトの誕生日もある十月は、たくさんの者達が命を落とした月である。そして先の大戦でも、一人の忍が大勢の者達の命を救うために命を落とした。灯籠に灯る炎のようにきらきらと煌めく彼女の瞳が、ナルトは好きだった。彼女は幼い頃からナルトを色眼鏡で見るようなことはせず、いつでも真っ直ぐな瞳で見つめていた。''火影になりたい''と語るナルトの夢を聞いた時も、彼女は言ったのだ。

人の痛みを理解できて、誰よりも真っ直ぐに相手に向き合えるナルトなら…きっと火影になれる。

今でも鮮やかによみがえる彼女の笑みと、たった今炎を灯したばかりの灯籠の光が重なる。いつの間にか空を埋め尽くしている灯籠の灯りを見て、傍のボルトとヒマワリは無邪気にはしゃぎ、そんな二人をヒナタが穏やかに見つめている。少年時代には想像さえしていなかった、何より焦がれた家族での時間。きっと彼女が願っていたのはこんな何気ない光景が溢れる世界。大きな幸せはなくてもいい。大切なひとが傍にいて笑ってくれる世界こそ、彼女が歌に込めた未来だったのだろう。
手の中にある灯籠を見つめたまま苦笑を浮かべたナルトは、そっと灯籠から手を離した。ナルトの手を離れた灯籠は、ゆらゆらと揺れながら空へと舞い上がる。こうして灯籠飛ばしを始めてから、ナルトは毎年決まって灯籠に込める想いがあった。

「…なまえちゃんが残してくれた未来、これからもオレ達が守るからな。だから、今は安心して見ててくれってばよ。」

今年もナルトの揺らぎない想いを受けた灯籠は、やがて空の上にいた他の灯籠と重なり合い、幻想的な光となって木の葉の里を照らす。飛ばした灯籠の灯りが、どうか一つでもなまえの元へと届きますように。そんな子供のような願いを抱えたまま、ナルトは遠くなる灯籠の灯りを見つめていた。

「……なまえちゃんは、いつもずるいってばよ。」

遠ざかった光に代わって再び夜を覆った闇は、ナルトの頬に流れていた一筋の涙を静かに包み隠した。


prev next
back

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -