7 空白の一年虎兎 [ 7/27 ]



ジェイグ事件、アンドロイド事件を終え、二人の間に確実に変わったものがある。互いに話し合うようになったのだ。自分の考えや弱みをきちんと正直に話す。言うだけは簡単だが、それはとても難しいことだった。しかし、気持ちを打ち明けることで互いが互いに『俺(僕)の相棒』と主張できるようになったのだ。
でも逆に『隠し事は絶対ダメ』みたいな思想になってしまったのも事実だった。いかなる時もきちんと全部話さなきゃ……そう思うあまり、少しずつ苦しくなっていく二人。とくにバーナビーは虎徹以上に『隠し事』に敏感であった。

【25話の空白の一年】

マーベリックの放送後、鏑木虎徹の無実とアンドロイドの特集、続いて生中継でバーナビーの謝罪が放送された。相棒の状態や真実を話たあとに一瞬あの完璧な顔がクシャッと歪み自分を責める。
『僕がもっとしっかりしれいれば、こんな・・・タイガーさんもあんなに傷つくことはなかった。本当に申し訳ありません』
記憶操作能力のせいなのだから、被害者であるバーナビーはほとんど何も悪くない。虎徹もそうだ。彼らは懸命にHEROや市民を守ろうとしていた。だからこそ、そんなTBコンビに感銘を受け、一時がた落ちしたアポロンメディアの株はあがる。
アポロンメディアは、それと同時に一瞬写ってしまったタイガーの素顔と鏑木の関係についての殺到する問い合わせの対応におわれていた。アポロンメディアは何も言わないが巷ではタイガー=鏑木と広まってしまう。
その噂が少しづつ沈静しはじめた、事件から一ヶ月たったある日。TB解散会見が開かれた。タイガーが一方的に能力の減退などを告げあっさり解散してしまった。虎徹は部屋を引き払いシュテルンビルトを離れることとなる。

バーナビーは、実家に帰ってく虎徹を見て『寂しいです』と言えなかった。バーナビーが彼を引き止めるということは、能力もない彼を困らしてしまうえ、やっとこ手に入れた、彼と愛娘の幸せな生活を壊してしまうことも意味したからだ。ただ『さよなら』とも言えずにいると、虎徹が屈託のない笑みを浮かべて『またな、バニー!』って言うから震えた声で必死に『はい』と返事をする。電車が出発するとバーナビーはホームで崩れ落ちるように膝をついて涙をながす。悲しい。悲しいが…『また会える』それが嬉しくて。
 バーナビーは虎徹が帰省すると、思い出の多過ぎる部屋を引き払いゴールドからブロンドに引っ越す。引っ越し先は虎徹が住んでいたアパート。もう虎徹の跡はないけど見慣れまくった部屋に入って『ただいま…』と呟く。今日からは誰の返事もないけれど……

 ブロンドに引っ越したあとのバーナビーは基本HEROとの接触は絶ち、虎徹のせいで増えてしまった私物を眺めながら虎徹宛のメールを未送信Boxに溜める作業を一週間くらい繰り返し、やっとこ『生活は落ち着きましたか?』とか当たり障りないメールを送る。すると送った瞬間虎徹から着信がくる
『バニー全然連絡くれないだもん』
と電話口で話す久しぶりの相棒の声に自然と顔が綻ぶ
『あ、バニー今笑ったろ?』
『えっ、なんで』
『相棒のことなら何だって分かるぞ』
と茶化すように言われてウッカリ言うつもりなかったのに『貴方がいないのは寂しい』とか言ってしまう。バーナビーは焦ったが、彼の弱音はしっかりと相棒の耳に届いた。
『あぁ、そういや。お前の炒飯食べてない』
虎徹は優しい声で食べに行っていいって聞いてきた。それは暗に、『合いにいく』といってるようなものだった。思わず『はい』って答えてから、自分が虎徹が住んでたアパートを借りたのを思いだして、バレたら恥ずかしいどころじゃないと焦る。それに恋人でもないのに、こんなことをする自分を気持ち悪がるかもしれない…いや、きっと彼はそんな人ではない。彼に余計な心配をかけるだけだ。
 虎徹と会う約束をして、大急ぎでゴールドステージに部屋を借りる。(これだから資産家の息子は)。そこで炒飯の練習を再開…。虎徹のために栄養も考え、それでいて虎徹の味に似せる。

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