君の顔が好きだ * 「あたしの どこが好き?」 唐突な問いに、面食らったような顔をみせる真子。 「なんや、いきなり」 そう言いながらも、あたしの腰を引き寄せる腕。 「そうやなぁ……」 と、かくん、と首を傾げ、一応は考えているような振りをする。 「やっぱ、 「ちょっと、“下”禁止っ!!」 「そんな言うたかて……」 「もういいよ」 ばふっ、と真子に背を向けてベッドに横になる。 ……薄々、気付いてたことだ。 バイト先のカフェの常連だった真子。あたしから告白して付き合い始めて、一ヶ月。 いつも店では愛想のいい真子が、二人きりのデートでは、あまり笑顔を見せないこと。最初は、素の顔もカッコいい、なんておめでたいことを考えてたけど……ホントは、あたしに興味がないだけなのかもしれない。 ……今なら、まだ忘れられるかなぁ。 カフェのバイトもやめて、どこか真子が近寄りそうもない場所で仕事探して……。 「ちょお、こっち向き。顔見せや、つまらんやんけ」 ぐい、と強引に抱き起こされる。大きな手で、あたしの顔を挟むようにして覗き込む意地悪な笑み。 ……ああ、この顔だ。 最初に惹かれたのも、こんな顔だ。勝ち誇ったような、意地悪そうな顔。 「……ほら、これや」 くすくすと笑いながら、あたしを抱き締めて髪をぐしゃぐしゃと掻き回す真子。 「拗ねて泣きそうな顔。オマエは、そーゆうんが一番可愛いわ」 「え……」 わざと? ……くそぉ。 悔しい。真子なんか、もう……。 「……大好きだ、ばか」 ぎゅっと抱きついて、耳元で吐き捨てる。 あたしの悔しげな声音を聞いて、声を上げて笑う真子。 「……知っとるわ、阿呆」 ……結局、真子が正しいのだ。 背中を撫でる手の優しさを今の今まで忘れていた あたしが “阿呆”なだけで。 (2010.09.24. up!) <-- --> page: |