Cherry Bon Bon






バンド仲間の中には、ピアスをつけてる男なんて珍しくない。顔だけで20箇所近く開けてるパンク少年の知り合いだっている。

そもそも現世に降りてきて、その時代の流行もロクに知らないうちに繁華街のはずれなんて環境に住み始めてしまったものだから、男の人のピアスに何かを思うことなどなかったのだ。


……真子に再会するまでは。


「……それでな?言うたってん。リサのエロ本にホンマは興味あるんやろ、て。一護のヤツも、お年頃やしなぁ」

いつものように、あたしの部屋で。コーヒーを淹れて、アジトに差し入れするために焼いたカップケーキを真子に味見してもらいながら、ぼんやりと その口許を眺めていた。

口許……正確には、その舌のピアス、だ。


「なんや……砂南、どないした?」

あたしの様子に気付いた真子は、話を途中でやめ、不思議そうに こちらを覗き込む。

「あ、ううん、別に。……どう?美味しい?」

「ああ。うん、美味いで」

そう言って、唇についた粉砂糖をぺろりと舐める舌。


「……なんや、そんな見惚れるほどカッコいいか?」

ニヤリと笑って手にしたマグカップを置くと、テーブルを横に押しやって あたしを抱き寄せる。


重なる唇。微かにひらいた唇を割って侵入してくる舌。

その舌のピアスに、舌先でおずおずと触れると、真子は喉の奥で くぐもった笑い声を漏らす。

「やっぱり、コレが気になっとったんや」

と、あたしに舌を出してみせると、くすくすと笑う。


……う。視線の先に気付かれてたと思うと、凄く恥ずかしい。

「だって……してる時に、ピアスが気になることってないなって……思って……その……」

どんどん尻すぼみに小さくなる声に、心なしか真子の顔も赤くなってく気がした。


「…………それは誘っとると解釈してええんか?」

「え?あ!そうじゃなくて、っ」

鼻先をぺろりと舐めた舌。次の一手を内心期待しながら、そっと目を閉じた。 



(2010.01.29. up!)



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