どうせ明日も晴れだろう






「ぅきゃはははは!」

そして、いつかどこかで聞いたようなけたたましい笑い声がアジトに響き渡る。


「こらぁ!離さんかい、砂南!うっとおしいてかなんわ!」

そんな科白も、まるっきり意に介さない、といった風情で 片手にジンライムのグラスを握り締めたまま、おんぶおばけよろしく、ひよ里の背中に抱きついている砂南。

「ちょお、真子!これ、なんとかしいや!」

半ギレ気味の ひよ里の矛先は、当然こちらにも向く。が。


「ええやん。砂南、俺には そこまでベタベタしてくれへんのやで?」

俺も含め、周りは皆、酔っ払い。ひよ里と砂南の様子を遠巻きに生暖かく見守っている。

クーラーボックスの中から新しい缶ビールを取って戻ってくると、ひよ里らの前に立ったまま二人を見下ろしつつ、 ひと口 呷って。


「……うらやましげな目ェして、こっち見んな、ハゲ」

「ほっとけや、ボケ」

そう言って、ビールをもうひと口。

二人の横にしゃがみ込んで、そのまま指先を砂南の喉元へ。まるで猫にするみたいな愛撫に、目を細める砂南。


「アンタがそーゆーことしたら、余計にウチに体重かかりよんやけど。……ってか砂南、いい加減に離れぇや!」

「…………ひよ里、あたしのこと嫌い?」

後ろから抱きついたまま、ひよ里の顔を覗き込む砂南。

そして、その科白に一瞬 絶句する ひよ里。


……なんや、面白いことになっとんな。

「ウ、ウチは、オマエみたいな酒グセ悪い鬱陶しい女、嫌いや!」

酔いも手伝って泣き上戸と化すのでは…と一瞬 身構えたが、砂南は特に気にするでもなく、ひよ里の肩に回した腕に力を込めつつ軽く笑い声を零す。

「……でも、あたしは、ひよ里のこと好きよ?」

「……っ!」

そんな罵声も聞き流すように静かな声で告げる砂南に、照れて ぱくぱくと声にならない声を発する ひよ里。


と、ひよ里の肩に顔を伏せ、ぽつりと呟かれた言葉。

「…………ごめんね」

「へ?」

唐突な謝罪の言葉に、わけがわからない、という顔で俺を見遣る ひよ里。

そんな ひよ里に俺は、黙って肩を竦めて見せて。


「……ま、黙って聞いとったりや」

砂南が、ひよ里に対して抱える罪悪感も、俺が説明することやない。

「…………アホか」

俺か#NAME1#か、どっちにともつかない小声での悪態。

すっかり空になった缶を手に立ち上がる。ふと思いついて、振り返ると、ニヤリと嗤って言った。


「意外と、ええ女やな、オマエ」

「意外と、てなんや!いきなり気色悪いっちゅーねん!しばくど、ハゲ!」


完全に復調した罵声。それを背中に受け流しながら、すっかり眠り込んでしまった#NAME1#を気遣うように支えている ひよ里を視界の隅で確認して、こっそりと笑った。



(2009.12.11. up!)



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