Believe The Light






「ねぇ、24日ってヒマ?」


さっきから、何やら禍々しいメロディをフォーク調で奏でていた#NAME1#が、ふとギターを弾く手を止めて振り返る。

「24日て、クリスマスイヴやな。……なんや、その鬱陶しい曲から連想される単語とちゃうけど」

「鬱陶しいて失礼な。元曲は、大御所アーティストの有名なクリスマスソングだよ、これ」

……薄々、そうじゃないかと思っとったが、やっぱりかい。つーか、クリスマスソングて……。


「……オマエ、自分が死神やて自覚あるか?」

「だいじょーぶ。ウチのドラマー、住職だし」

「…………大丈夫の意味が、わからへんのやけど」

そう言って、はあっ、と溜め息をつくと、#NAME1#は まるで どこぞの狐を思わせる笑みを浮かべ目を細める。

「ライヴやるの。クリスマス・ライヴ。イヴだっつーのに、予定のない寂しい野郎共が一致団結して、同じく寂しくイヴを過ごす お嬢様方をお慰めするのですよ。……んで、あわよくば引っ掛けて帰れ、と」

「……オマエ、そないして罪のない部下を煽るの、昔っから得意やったもんなぁ…………」

「何それ、人聞きの悪い!」

ぎっ、と俺を睨む#NAME1#。けれど、そのムッとした表情もすぐ消えた。


「ねえ、来ない?うちのスタッフ扱いで入ったら、タダ酒飲めるよ!ちょっと搬入手伝ってくれる程度でいいし!」

「あんまり必要以上に人間と関わるのも、俺の主義に反するんやけどなぁ。ひよ里がウルサイし」

呟いた気のない科白に、ぎゅっと俺の袖を掴む手。ふっと、そちらに目を向ける。と……。

「……なんや、どうした?」


妙に必死に誘ってくる#NAME1#に違和感を感じてはいたが。

不安げな表情。その頬に手を添えると、視線を外して目を泳がせて……ぽつりと吐き出した。

「イヴ、誰か誘うの……?」

…………また、リサか白が何か吹き込みおったな?

#NAME1#と再会する前の自分の荒れっぷりは、あまり思い出したくはない。もう#NAME1#と生涯会うこともないと思っていた、あの頃のことなど。けれど……。



……嫉妬に独占欲、ね。#NAME1#にしたら、えらい進歩やな。
 
「クリスマスをダシに女口説くような、そこらのガキと一緒にすんなや?」

こつん、と額をぶつけて、拗ねた顔を覗き込む。

「ライヴ終わったら電話しぃや。迎えにいったる」

「うん!」


砂南が妬いてくれることは正直 嬉しいと思う。

けれど、それで傷つけることは本意ではない。埋め合わせという訳じゃないけれど……。


……かわりに甘やかしても、構わんよな?

確定された未来じゃないなら、せめて今くらいは…………。 


 
(2009.12.19. up!)



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