Sweet Candy






日暮れとともに、当たり前のように砂南の待つマンションへと帰ってくる。


再会して、もう随分経つのに、未だに新婚夫婦のようだとリサは吐き捨てる。ずっと俺が砂南を独占しとるのが、相当 気に食わんらしい。

100年離れ離れだったトラウマで、まだ少し精神的に不安定な砂南が俺から離れたがらないのも理解しているので、リサや ひよ里の攻撃を受けるのは、もっぱら俺ひとりなのだが……。


……新婚上等や。ベタベタして何が悪いねん!


ぶつぶつ言いながら合鍵を出しつつドアの前に立つ。…と、漏れ聴こえてくるギターの音。

このマンションは、ギターのために何よりも防音を一番の条件しして選んだ、というだけあって、かなり壁は厚い筈なのだ。

……なのに、こんだけ音が漏れとるいうことは…………。


鍵を差し込んで、ドアノブを捻って。

一度、そこで深呼吸。

思い切ってドアを開けると、溢れ出てくる音量に、慌てて部屋の中に飛び込んでドアを閉める。


「こらぁ!何やっとんねん、砂南!」

ずかずかと上がり込んで、アンプの電源をたたっ切ってやった。

「あー……真子、おかえりぃ」

顔を上げて俺の顔を見ると、ふにゃあ、と油断しきった笑顔を見せる。

「お、おう……ただいま。……やのうて!」

そのやりとりに、リサに言われた『新婚夫婦みたいだ』という科白を思い出し、今更ながらに恥ずかしくなって赤面するのを誤魔化すように怒鳴りつける。

「そないなデカい音出しよったら、近所迷惑やろが!」


「平気、平気ー。両隣の学生は学祭準備の佳境だっつーて、昨日から大学にほぼ泊り込みらしいし、下は空き室。一応、ここは最上階だから上はナシ、と」

はあ……。

「なるほどな……」

後ろに どっかりと座り込むと、当たり前のように俺の胸に背中を預けてくる砂南。

そのまま甘えるように俺を見上げる瞼に唇を落とし、すっかり止まってしまった手からギターを取り上げて、部屋の隅に寄せる。


「……ねぇ」

「なんや?」

下から俺を覗き込むようにして、何やら恥ずかしげにクスクス笑い出して。

「さっきの。……なんだか、新婚さんみたいだよね?」

照れ笑いとともに呟かれた科白に、見透かされたような気がして思わず言葉に詰まる。


「……あ、真子、顔赤い」

「…………やかましい」

照れ隠しに、砂南の髪をぐしゃぐしゃに乱してやるも、本人は幸せそうに頬を染めて笑っているだけだ。

悔しくなって、砂南の頭を抱き寄せ、耳元に唇を寄せる。

そっと囁いた科白に、耳まで赤く染めた砂南。


……それでも、勝った気がせぇへんのはなんでやろ。


腕の中で拗ねて そっぽを向いた身体をぎゅっと抱きしめて。

優位に立ったフリで、宥めるようなキスを繰り返した。



(2009.11.09. up!)



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