My Favorite Girl






「……で、内魄固定剤と……SOUL CANDYを1本ずつ。以上で」

「はぁい、じゃあ計算しますねー」

真子にコーヒーを奢ってもらったあと、義魂丸やら細々したものが切れかかってるのを思い出し、浦原商店に寄った。……尸魂界に発注すると時間かかるし。

代金を計算している浦原さんに背を向け、駄菓子の棚に向き直る。板チョコ2枚とビスケットを1箱手に取り、ジン太くんに声を掛ける。

「これ、お願い」

「まいどー」

品物を受け取り、レジを打って、袋に詰めて……って、手際がいいなぁ。いいのか、こんな子を働かせて。おうちのお手伝い感覚なのかなぁ。

「あ、あと、コーヒーとか置いてないかな、ここ」

「うーん……うち駄菓子屋だから、あんまり高いのは置いてないぞ?」

と、棚の隅っこから出してくれたモカとブレンドのパック。2つとも買って、それだけ別の袋に入れてもらう。

「あ、これもお願い」

スナック菓子をひと袋手に取って手渡し、それもレジ袋に詰めようとするのを止める。

「それは、ウルルちゃんと一緒に食べて?あたしの奢り」


「やあ、すみませんねぇ、祐月サン」

扇子をひらひらさせる浦原さん。その隣に立つテッサイさんが、精算の済んだ商品の包みを手渡してくれる。


「……先日いらっしゃった時に比べて、随分お幸せそうだ。あの人も、100年待った甲斐があったというものでしょうね」

いつものへらへらした顔じゃない、どこかしんみりした表情の浦原さん。それに曖昧に笑ってみせて。

……幸せそう、かぁ…………。

「そう……ですね。幸せなんですよね、あたし。生きて真子と再会できて。不安に思うことなんて、何もない筈で……」

視線をなんとなく下に落としながら呟いた言葉に、浦原さんは きょとんとした顔で言った。

「不安、ねぇ……。そもそも、あの人が 今更アナタを手放すと思います?……あ、イザとなったら、ストーカーと化すかもしれない、って不安はあるかもしれませんけど」

と、後半の科白は、とてつもなく軽い口調で言ってのける。


見境なく甘えて愚痴ってるの、わかってるんだろうに。みんな、優しいや…………。



荷物を抱えて浦原商店を出て。最初の角を曲がったところで、ひょい、と荷物を奪われる。

「真子」

あたしから取り上げた荷物を抱え、真子は先に立って歩き出す。

「浦原さんたちに会ってかなくていいの?」

「ええよ、別に。話すこともないしな」

「ふぅん……」

荷物を片手に抱え直した真子は、空けた片手をあたしの背に回す。

「ま、喜助に色目使われたら言いや。俺がシメといたるわ」

……ベタベタしない付き合いしてるらしい割りに、気が合ってるな、この二人。冗談の傾向が一緒だよ。


「そうだ、これ。あたしから、カンパ」

大きな紙袋とは別にして持っていた小さいレジ袋を差し出す。

「あ?コーヒー?俺らに買ってくれたんや?」

「……浦原商店で、ついでに買ったものだから、そんなにいいの置いてなかったけど……」

「おおきにな」

うだうだと言い訳をする あたしの科白を遮り、がしがしと頭を撫でる。

「俺、ひよ里に何も言わんで出てきてん。コレ買いに行っとった言うたら、誤魔化せるわ」

……そうかなぁ。

安いコーヒーのパックあげただけなのに。

心なしか機嫌の良い真子の横顔を見上げて。また少し、その腕に身を寄せた。



(2009.08.20. up!)



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