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融解し混合す (豪風)

2010/08/03 02:32


色んな声が聞こえて、心臓にまで響いて来る重音と何かを叩くような高音が耳に入ってきた。
何だろう、外がやけに騒がしい。

風丸はベットから降りてカーテンを開け外を見る
浴衣や帯の沢山の色と、大勢の人の笑顔が眩しかった。

ああ、お祭りか
外が騒がしいのはこのせいだったんだ。

カーテンに手を掛けてから最後にもう一度外を見た。
そして目を見開いた
見覚えのある人物が、こちらを見上げていたからだ。

自分の顔が赤く熱くなるのがわかった。
目が合う、優しく微笑まれて心拍数は上がる一方であった。

携帯と財布と鍵だけもって外に出る。
どうして、と聞こうとしたけど、それより少しはやく手を差し伸べられて聞かなくても理解出来た。

「行こう」

ゆっくり頷いて、豪炎寺の手に自分の手を重ねた。


会場に近付けば近付く程、あの重音が強く心臓に響いて来た。
提灯のあかりが見えて、人が沢山いて、沢山の色が在って目が痛くなるくらい明るかった。

もう満足だと思った。その色が見れて、音が声が聞こえて、それに何より大好きな豪炎寺が隣に居て。
自然と歩みがゆっくりになって、止まってしまいそうになる。

眩しくて、眩し過ぎてぼやける視界に、心配そうな豪炎寺の顔が映った。

「明る過ぎて怖い。眩し過ぎて怖い。
自分は此処に溶け込めていないような気がして、怖いんだ。」

ああ、自分は何を言っているのだろう。
こんなこと言うつもりなかったのに。
余計に豪炎寺を心配させてしまったじゃないか。

繋いだ手が一度離れて、すぐに抱きしめられた。
名前を呼ばれて、今度ははっきりと顔が見えた。
真っ直ぐに自分を見つめる瞳が次第に近付いて来る。
豪炎寺の背中に手を回して、強く抱きしめ返す。
このまま2人ひとつになってしまえばいいのにと思う。

唇同士が重なって、互いを求め深く口付ける。


溶けて混じり合えば、此処の色にも溶け込める気がした。



豪炎寺となら、この眩し過ぎる世界ででも生きていける気がする。



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