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笑み (不風)

2010/05/30 11:07


細く、白い首に五本の指が食い込み赤い痕がつく。

もう暫くこのままでいれば完全に呼吸できなくなることを
風丸は身を以て理解していたし、不動は経験と計算の上で分かっていた。

「おまえ死にてえの」

不動が首に食い込む手を放すと、目の前の蒼はすとん、と地面に落ちた。
けほけほと咳き込み、肩で息をする風丸は、疲れたように、或いは悲しみ同情するように、眉を下げて小さく笑う。

「…おまえになら、不動になら殺されてもいいかな、なんて」

指の痕がついた首を自分の左手でなぞり、力を込めて圧迫する。
その顔は苦痛に歪みながらも笑うことをやめない。

「……っう、あと、どれくらい…絞めれば、死ぬ、の…だろ、な」

不動が未だ首を圧迫し続ける左手を強くひっぱたき、無理矢理風丸を解放する。

「バカか、おまえ」

バカかもしれない、
声にならないくらい小さな声で風丸は言った。

不動はしゃがみ込み、今度は手ではなく腕を首に回す。

「…おまえを殺して良いのは俺だけだ」

風丸は笑う、その笑みは今までとは違う
幸せと喜びの笑みだった。




「大好き」

だから、
死ぬ時が来たら、貴方の手で殺して欲しい。



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