無彩色迷路(源佐久)
2010/05/24 19:07
電子音が鳴り、脇に挟んだ体温計を見て佐久間は溜め息をついた。
『今無理をして熱を長引かせるより、明日から全快の状態で練習に参加する方がチームの為になると思わないか』
電話越しの鬼道の声を思い出し、ペットボトルの水を少し飲んでから布団に戻り目を閉じた。
眠りにおちた佐久間は夢を見た
色の無い迷路のような世界に一人、正しい道、ゴールまで続く道を自分は知っている。
なのに途中で前に進んでいるのか後ろに進んでいるのかわからなくなる、ゴールへと続く道は解っているのに何も出来ずただ立ち尽くす
終わりが見えない長い夢
佐久間は度々見るこの夢が嫌いだった。
精神的に追い詰められるような感覚が、怖いと感じる時もある。
だから早く覚めて欲しかった。
夢の中に居る佐久間を誰かが呼ぶ声がした。
正面から誰かが歩いて来る
その人物を自分は知っている
不安と恐怖が消えていく。
徐々に鮮明になってゆく意識
声の主は源田であることがわかった
「おはよう佐久間」
迎えに来るのが遅い、と呟く。
源田は笑って佐久間の頭をそっと撫でた。
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