私がやる必要あります? | ナノ




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彼方と初めて会ったのは朽木家主催の茶会だった。
彼方の家も四大貴族の一つで爺様が懇意にしておられたのだ。
私はまだ幼く、私より幾分か年上の彼方は少し大人っぽく見えたのだが成長し、親しくなる内にそれは間違っていたと思い知った。
言ってしまえばこれが初恋なのだろう。
あの時の彼方は綺麗に着飾っており美しかった。
玲紋家の長女としてお淑やかに堂々と振る舞う姿に見惚れていたのだ。
初めて母以外の女性に親しく名を呼ばれた。

この茶会以来、彼方とはよく会うようになった。

爺様が隊長だった頃彼方は護廷隊に入隊し間もなく十二番隊の三席となった。
その時の隊長が浦原喜助だ。

「白哉はやっぱり銀嶺お爺様の六番隊になるのかな」

彼方は入隊した後でも隊長である爺様を名前で呼んでいた。
爺様も可愛がっていたしな。
あの化け猫と一緒によくうちの邸に来ていた。
仕事はどうしたとも思うが十二番隊なら大丈夫なのだろうか。

そして彼方と出会って4回目の春。
朽木の邸で桜を見る彼方の髪がゆるりと揺れた。
…随分長くなった。
腰まで届く毛先を見ながら思う。
纏めないのか、と。

「彼方」

「なに?」

「使え」

翌日彼方に会って早々包みを手渡す。
不思議そうに首を傾げる彼方に開けるよう託せば素直に従った。

「わぁ綺麗、」

簪だ。
色素の薄い彼方の髪に映えるだろう漆塗りの簪。
先端には藍と赤のトンボ玉。

「くれるの?」

「あぁ」

「ありがとう」

ふわりと綻んだ顔は忘れようにも忘れない。
初めて女性に贈り物をした。


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