▼ 凶王
いつの間にか訪れた冬、師走。
晦日も迫った頃…ふと思い出した。もしかして、今日クリスマスなのでは!?と。
いやでも、この世界の暦というかアレが婆娑羅歴という…ちょっと意味の分からない暦だし、そもそもキリストっているの?宣教師がザビってるけど。
…等々の疑問を一瞬抱いたが、気の迷いと一蹴してクリスマスをすることにした。
問題は、クリスマスって何する日かピンとこないことである。
クリスマス…思い浮かべるのはカップルが街に蔓延る様。…私、相手いない。
――もう、ケーキ焼いて三成に食わせよう。そうしよう。
とにかく、ケーキ…といってもそんな高級素材があるのか…と思われるだろうが、何故かあるのである。
が、ケーキ型などあるわけもないし、そもそも私自身ケーキのレシピとか分からない。
ので、クッキーのようなモノを作ることで妥協した。
小麦粉に砂糖・油・卵を突っ込んで、ねりねりねり…。
良い感じのかたさになったソレをフライパンに…あれ、なんでフライパンが…?まぁ、気にしない。…フライパンに流し込んで、プツプツ気泡が浮かんできたらひっくり返して焼いて完成。
あれ、これホットケーキ…。
「三成様、少しよろしいでしょうか?」
何故か途中でホットケーキにすり替わってしまっていたが、気にせず三成の所へ持って行く。
この時間なら自室にいるだろうし、と部屋の前で声をかける。
「…あぁ」
やや間があってから返事が返ってきた。
否定ではなかったので、サッサと襖を開いて部屋に入らせてもらう。
「…失礼します。
さて、本題ですが三成様にこのような物をご用意させて頂きました。
食べてください」
お盆に乗せたホットケーキは二枚重ねで蜂蜜をかけた物で、良いにおいが私の鼻孔をくすぐっている。
「なんだそれは」
「南蛮菓子を僭越ながら作成させて頂きました」
はたしてホットケーキは南蛮菓子なのかどうか。は投げ捨てておいて、しれっと三成の前に置く。
そして、私も座る。食べるまでは動かないぞ!という心構えで。
その熱意が通じたのか、渋々と箸を取った三成を凝視。
…少し嫌そうな表情をしたが、一口食べてくれたのを見て安心した。
「で、何故こんなものを作った」
「そろそろクリスマスかと思いまして」
半分ほど食べてから口を開いた三成にそう返事すると、くりすます?なんだそれは。と首を傾げられたが、説明が面倒なため…笑顔で頷いて誤魔化しておく。
あぁ、そうだった。プレゼントも用意したんだった。
唐突に思いついたクリスマスだったけど、プレゼントも必須だよね!と頑張って用意したそれを懐から取り出す。
「あと…クリスマスなので、三成様に贈り物です」
キョトンとしながらも受け取ってくれたプレゼントの御守は、私が縫った物である。
…三成様に平穏と安寧を。
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