あおいそら

凶王

 いつの間にか訪れた冬、師走。
 晦日も迫った頃…ふと思い出した。もしかして、今日クリスマスなのでは!?と。
 いやでも、この世界の暦というかアレが婆娑羅歴という…ちょっと意味の分からない暦だし、そもそもキリストっているの?宣教師がザビってるけど。
 …等々の疑問を一瞬抱いたが、気の迷いと一蹴してクリスマスをすることにした。

 問題は、クリスマスって何する日かピンとこないことである。
 クリスマス…思い浮かべるのはカップルが街に蔓延る様。…私、相手いない。

――もう、ケーキ焼いて三成に食わせよう。そうしよう。

 とにかく、ケーキ…といってもそんな高級素材があるのか…と思われるだろうが、何故かあるのである。
 が、ケーキ型などあるわけもないし、そもそも私自身ケーキのレシピとか分からない。
 ので、クッキーのようなモノを作ることで妥協した。

 小麦粉に砂糖・油・卵を突っ込んで、ねりねりねり…。
 良い感じのかたさになったソレをフライパンに…あれ、なんでフライパンが…?まぁ、気にしない。…フライパンに流し込んで、プツプツ気泡が浮かんできたらひっくり返して焼いて完成。

 あれ、これホットケーキ…。



「三成様、少しよろしいでしょうか?」

 何故か途中でホットケーキにすり替わってしまっていたが、気にせず三成の所へ持って行く。
 この時間なら自室にいるだろうし、と部屋の前で声をかける。

「…あぁ」

 やや間があってから返事が返ってきた。
 否定ではなかったので、サッサと襖を開いて部屋に入らせてもらう。

「…失礼します。
 さて、本題ですが三成様にこのような物をご用意させて頂きました。
 食べてください」

 お盆に乗せたホットケーキは二枚重ねで蜂蜜をかけた物で、良いにおいが私の鼻孔をくすぐっている。

「なんだそれは」

「南蛮菓子を僭越ながら作成させて頂きました」

 はたしてホットケーキは南蛮菓子なのかどうか。は投げ捨てておいて、しれっと三成の前に置く。
 そして、私も座る。食べるまでは動かないぞ!という心構えで。

 その熱意が通じたのか、渋々と箸を取った三成を凝視。
 …少し嫌そうな表情をしたが、一口食べてくれたのを見て安心した。

「で、何故こんなものを作った」

「そろそろクリスマスかと思いまして」

 半分ほど食べてから口を開いた三成にそう返事すると、くりすます?なんだそれは。と首を傾げられたが、説明が面倒なため…笑顔で頷いて誤魔化しておく。

 あぁ、そうだった。プレゼントも用意したんだった。
 唐突に思いついたクリスマスだったけど、プレゼントも必須だよね!と頑張って用意したそれを懐から取り出す。

「あと…クリスマスなので、三成様に贈り物です」

 キョトンとしながらも受け取ってくれたプレゼントの御守は、私が縫った物である。
 …三成様に平穏と安寧を。

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