▼ チョロ松
クリスマス。
待ちに待ったわけでもない、クリスマス。
「アオイちゃん、クリスマスプレゼントを用意しようと思ったんだけど…」
「…だけど?」
「あのクズ兄弟に邪魔されて買えなかった…」
ふぁっきん!想像通りの六つ子ちゃん達だぜ…。と心の中で呟きながら、約束通りの時間に松野家を訪ねると、玄関先でチョロ松が土下座してきたのを、なんともいえない顔で見つめる。
まぁ、見つめたところで何も変わらないんですけどね!
「ほんと、ゴメン!」
「期待してなかったから、全然大丈夫!」
ゴチンと頭を床にぶつけたチョロ松に向かって良い笑顔でサムズアップした。
なんか、それはそれで傷つく…。とか聞こえたけど、きっと気のせいだと思う。
「…そんなことより、はいこれプレゼントね!」
いまだに正座のチョロ松の膝の上にポンとプレゼントを乗せると、ありがとう!と言いながら素早く封を切って中身を確認している。
「あ、腕時計だ!」
「うん、フランク・三浦だよ」
「…えっ?」
「チープ腕時計、ナウなヤングにバカウケだよ?」
パチンとウィンクしながら、なにげに私とお揃い!と左腕の時計を見せる。
「…お揃い!?
って、それより…今時ナウなヤングにバカウケとか言わないからね!?」
一瞬、嬉しそうな顔をしたあと勢い良く立ち上がって私に詰め寄ってきたが…足がしびれているらしく、床に転がった。
それを笑顔で見ながら、チョロ松が床に転がっている間に…家に上がらせてもらうことにする。
…後でちゃんとしたプレゼントを渡したら、どんな面白い反応をしてくれるのか…楽しみ!と思いながら、ぬくぬくの炬燵に足を入れた。
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