▼ 一松
「誕生日おめでとう、一松」
日付が変わった瞬間、一松におめでとうを伝えた。
電話越しなので、一松の様子は分からないのが残念だけど…私が1番におめでとうを言えたので満足である。
「…あざーっす」
ふふふ、と満足しながら笑っているとガチャリと家の扉が開いて、一松が顔を覗かせた。
驚きながらも迎え入れると、なれた様子でいつもの場所に座る一松を見送って、私も自分の席に座る。
「突然どうしたの?」
「…会いたいから来ただけ。悪い?」
少し照れた一松に驚きつつ、頬を緩めながらお昼にでも渡そうと思っていたプレゼントをゴソゴソと取り出す。
気にいってくれると良いんだけど…。ボソボソ言いながら渡すと、驚いた表情で受け取ってくれた。
「…なんで猫じゃらし?」
「スーパーハイブリッドの猫じゃらしだよ?」
一松が鮮やかな色の猫じゃらしを振りながら首をかしげたので、パッケージに書いてある文を読み上げる。
何度見ても、何と何のハイブリッドにか全くわからないのが…いいよね!
1人で頷きながら、一松を見つめると…私の目の前で猫じゃらしを降り始めた。
「…なに?」
「ほらほら…」
「いや、私ネコじゃないんだけ…ニャー!」
あまりにもしつこいので、仕方なくネコになって猫じゃらしを掴むと、一松に捕まってしまった。
ビックリしていると、ギュッと私を抱きしめて頭を優しい表情で撫でてきた。
…おかしい。私がお祝いして喜んで貰おうも思ったのに、私が喜ばされてしまっている。
一松…恐ろしい子!
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