▼ 黒犬
すっかりハロウィンで大広間がカボチャのランタンで一杯になって、イタズラ仕掛け人がお菓子をもらいに東奔西走している。
今年も仕掛け人絶好調だなぁ…。と思いながら、関わらないようにコソコソと机から離れようと立ち上がって歩き出した。
「アオイ!」
大量の戦利品を抱えたシリウスがキラキラとした笑顔を浮かべながら駆け寄ってきた。
…一瞬シリウスに犬耳としっぽが見えた気がした。
「シリウス!」
とりあえず、今気がつきました!というのを装いながら立ち止まると、抱きしめられた。
外国人はスキンシップが過剰だなぁ。と思いつつ、シリウスの背中に手を回してポンポンと叩いておいた。
「…トリック オア トリート」
至近距離で呟くようにシリウスがお菓子を催促してきたので、もしもの時用に準備していたお菓子…ってかアメをポケットから取り出して、手に握らせる。
笑顔の私とは違い、なんともいえない表情のシリウス。
「アメ、美味しいよ?」
「なんでまたアメ…」
非常にがっかりした表情のシリウスに、いつのまにかやって来たジェームズが優しく慰めるようにシリウスの肩を叩いた。
そのときの表情が腹立たしかったので、私もお菓子を催促することにした。
「トリック オア トリート、お菓子ちょうだい」
「…あぁ、お前はそんなヤツだったな」
肩を落としたシリウスとは対照的に大爆笑するジェームズ。
ハロウィンって、お菓子を貰う日だよね?と首を傾げながらもキッチリお菓子を貰った。
シリウスはなんか高価そうなクッキーで、ジェームズは安いチョコだった。
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