あおいそら

箱押し

 ついにこの日がやって来たか。と思いながらハロウィン衣装に袖を通し、ウィッグを被る。
 …そして、待ち合わせ場所の公園に向かう。

 公園には、予定通りチョロ松以外の六つ子ちゃん達が揃っていた。
 みんなお揃いの衣装というか、にゃーちゃんコスで、はっきり言って異様というか、気持ち悪い。
 まぁ、私もにゃーちゃんなのでアレだけど。
 …私が近づくと誰かが頷いたので、予定通りにスマホを取り出してチョロ松を呼び出す。

「あ、もしもしチョロ松君?」

『アオイちゃん急にどうしたの?』

「今日ハロウィンでしょ?
 だからお菓子作ったんだけど…渡したいから、いつもの公園に来てくれる?」

『あ、そっか…今日ハロウィンか。
 わかった、すぐ行くよ』

 ブツリ。と電話が切れたのを確認してから、ニヤリと顔を見合わせながら笑う。
 …後は獲物が来るのを待つばかり、とそれぞれ物陰に隠れてチョロ松を待った。

「あれ…誰もいないな」

 待つこと数分でやって来たチョロ松は、あたりをキョロキョロ見渡しながら一人呟いた。
 その呟きを合図に素早く物陰から飛び出してチョロ松を囲むように立ちふさがる。

「…え」

「トリック オア トリート!」

「トリック オア トリートにゃん」

「トリック オア トリート…」

「あっははー!トリック オア トリート!」

「トリック オア トリート!
 お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうにゃん」

「トリック オア トリート!
 あ、はいコレ約束のお菓子ね」

「あ、ありがとうアオイちゃん…。
 ってかコレどういう状況?」

 キョトンとしているチョロ松を無視して、お菓子くれ−!とそれぞれ好き勝手に言いながら手を出している。
 私もトリック オア トリートと言ってから、チョロ松用に用意していたお菓子を渡す。
が、それが気に入らなかったのか、六つ子ちゃん達は俺のは−!?と叫んでいるのを無視して、ハロウィンの仮装だよ?とチョロ松に告げる。
 さて今日の予定は終わった。といそいそと帰ろうとしたら、にゃーちゃんコスした六つ子の誰かが私の肩に手を置いた。

「アオイちゃん、俺の分は?」

「もちろん俺の分もあるよな?」

 声からするに、肩に手を置いたのはおそ松で…その後に続くように服の裾を掴んで阻止してきたのはカラ松のようだ。
 なぜか涙目なのはスルーしておく。
 えー、何この状況。と思っていると謎の威圧感を放つにゃーちゃんが無言でこちらを睨んでいる。
 その後ろでバットを元気よく振っているにゃーちゃんは、確実に十四松。

「アオイちゃん、はいコレお菓子。
 なんか期間限定で可愛かったから買っちゃったんだけど…お菓子交換しない?」

 面倒なことになった。と悩んでいると、目の前に回り込んだトド松が可愛らしいラッピングされたハロウィンのお菓子を私に押しつけてきた。
 もしお菓子持っていなかったらどうするつもりだ。と思ったけど…もしものためにお菓子を用意していたので、それを渡す。

「ありがとう、アオイちゃん!」

 ニコニコと受け取ったトド松は、何故か勝ち誇った笑みを浮かべている。
 が、それを見た六つ子ちゃん達(チョロ松以外)は凄い表情になった。

「あぁ、うん。みんなの分、あるからね?」

 この後の泥沼というか血みどろ?の展開が予想されたので、そっとお菓子を取り出して…六つ子ちゃん達の手のひらにそっと1個ずつ乗せる。
 ちゃんとしたお菓子は2つだけしか用意してなかったというか、予算がなかったので…思ったより安く入手したチ○ルチョコ(パンプキン味)である。
 まさかのチ○ルチョコに気をとられているうちに…さっさと逃げることにした。

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