▼ 一松
ガリガリガリッ。
玄関のから爪で引っ掻いている音がする。
何かと思って開けてみると、一松の親友・エスパーニャンコが黒いフード付きのマントを着て座り込んでいた。
どうやら引っ掻いていた犯人はコイツらしく…扉に真新しい爪痕があるが、見なかったことにする。
「にゃーん」
座っていたニャンコが、まるで付いて来いと言わんばかりに立ち上がって歩き出した。
一体なんだろう?と首を傾げても分かるはずもなく、とりあえずニャンコについていく。
ついて行った先は、松の家で…当然一松が待ち受けていた。
…猫の着ぐるみのような物を着た出で立ちで。
「…あ、今日はハロウィンか」
「トリック オア トリート」
ジーッと一松を見つめていたら思い出したハロウィンの存在に、手をポンと打ちながら呟くと、ここぞとばかりに手を差し出しながら一松が催促する。
お菓子…あったかな?とポケットを探してみても、着の身着のまま出てきたので持ってない。
持ってないのがバレると何をされるか分からない。
アニメでは六つ子ちゃん達がイヤミの家財道具をかっぱらっていったし…。
いろんな想像が頭をよぎって、嫌な汗が背中を伝った。
「1名様ご案内ー」
ヒヒッと笑って一松はガシっと私の腕をとって引きずり込まれた。
…何かと思ったら色違いの猫の着ぐるみを着せられました。
んん?どういうこと??と首を傾げている間に、エスパーニャンコを渡されたので抱きかかえると…嬉々として写真を撮り始めている。
イタズラ?これイタズラっていうより嫌がらせっていうか…着せたかっただけでは?と乾いた笑いが出た。
…まぁ、ハロウィンの思い出として、写真は焼き増ししていただきます。
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