あおいそら

カラ松

 どうしてこうなった。
 今更後悔しても遅いのは分かってるけど…何故こんなことになったのか、冷静に考えてみよう。
 別に蜂蜜まみれで甘ったるい匂いを漂わせているカラ松から少しの間でも現実逃避をしたいから…というわけではない。けして。

 閑話休題。

 今日は六つ子ちゃん達にお菓子をせびられる事が予想できるので、前々からこの日のために買い込んでおいたお菓子を5つ分、カラ松用には手作りのお菓子を突っ込んだ袋を持って家を出た。
 キョロキョロと不審者がいないことを確認して、コソコソと角を曲がると…なんか、大きくて青いモコモコが視界に入った。

「待っていたぜ、ハニー!」

 大っきいモコモコが動いたかと思うと…カラ松だったという、オチ。
 仮装?これは仮装か?と疑問が頭をもたげたが、驚きと苛立ちと…謎の脱力感で言葉にならなかった。
 自然と下がった視線の端に空気を送っている線が見えて、さらに脱力した。

「トリック オア トリート」

 キラリ。と何かを輝かせながらそう告げたカラ松に思わず何かをぶつけなくなった。
 手頃な石…。と足下を見ても流石に石なんて落ちていない。

「どうしたんだ、ハニー?」

「こんな所で何やってるの!?
 ハニーとかお菓子とか言う前に、もっとこう…大事なモノがあるでしょ!?」

 狭い道路いっぱいサイズの着ぐるみというか、ゲルゲに身を包んだカラ松を冷たい目で見つめる。
 そもそもハロウィンの仮装ってこういうのだっけ?
 いくら人通りの少ない道とはいえ、通行人の邪魔だし…私とカラ松を交互に見ながら通っていくご近所さんの視線に耐えられない。
 …あぁ、いっそ蜂蜜でもぶん投げてやりたい。なんて思った瞬間、ニュッと現れた十四松が蜂蜜のたっぷり入った壺を笑顔で私に渡してきた。
 なぜ?という疑問を抱く前に、壺の中身を衝動のまま思いっきりぶっかけた。

 …ら、大変なことになりました。

「ごめんって…。 ほら、このゲルゲは私が洗っておくからさ…。
 お菓子あげるから機嫌直して、ね?」

 しょんぼりと涙目で道路におやま座りしてるカラ松の顔についた蜂蜜をハンカチで拭き取りつつ、ご機嫌とりとしてお菓子を握らせると…機嫌が戻ったのか、立ち上がってサングラスを格好つけながら…かけた。
 どこから出した?とか、なぜ今かけた?とか疑問はつきないけど…ここは我慢しておく。

「ふっ、やはり照れ隠しか。
 ハニーはツンデレだな」

 思わず足下に転がっている空の壺を持ち上げたのは仕方がない、よね?

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