▼ 一松
昨日から用意していた、バレンタイン用のチョコマフィンを紙袋にそっと入れて家から出る。
マフィンにチョコで耳をつけてニャンコにしたんだけど、一松喜んでくれるかな…?
ドキドキしながら慣れた手つきで玄関を開けて、おじゃましまーす。と言った瞬間、一松が玄関で小山座りで待っていた。
「…あっ、来た」
「一松、なにしてるの?」
「べつに。
そんな事より、上がってくでしょ」
立ち上がってスタスタと奥へ引っ込む一松を慌てて追いかける。
べつに。と言いながら私の持っている紙袋を凝視してる一松が可愛すぎる!と、本人がコチラを見ていない事いいことにニヤニヤしながら二階の部屋におじゃまする。
「…で?」
「はい、バレンタインチョコ!」
私が襖を閉めると直ぐに様子を伺うように聞いてきたので、可愛いなぁ。と思いながら手に持ってる紙袋を両手で差し出すと、ビックリするぐらいの満面の笑みで受け取って、袋の中を見た瞬間に何故か真顔に戻った。
「まさかコレ、義理じゃないよね」
「本命だよ。コレしか作ってないし」
「…でも、沢山入ってる」
「つい作りすぎちゃったから、沢山入れちゃったんだけど…ダメだった?」
疑り深い一松に本当のことを告げると、全然ダメじゃない!と若干裏返った声で叫んだかと思うと、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
ホント、一松可愛い…。と思いながら、感想聞きたいから食べて!と催促して食べてもらう。
「…美味しい」
「良かった…。
味見する暇なかったんだよねー」
「…えっ」
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