あおいそら

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一緒に昼食

 目立つ白い車掌さんのクダリに拉致されてやって来たのは、バトルサブウェイ関係者専用休憩室…の隣にある――噂によればノボリとクダリ専用の部屋――に連れ込まれた。
 このようなバトルサブウェイ関係者専用スペースなんて使ったことはおろか、近付いたことがないので――私はバトルサブウェイ関係者ではなく、売店関係者だし――とても居心地が悪い思いで通り抜けた通路の先にある、他の扉とは一線を画した少々豪華な扉を躊躇いもなくクダリは開け放った。

「ただいまー!」

「お帰りなさいまし、クダリ。
 ですが、わたくしは扉を開ける前にノックをするようにとお伝えしたはずですが…もしやお忘れですか?」

「えー、ノボリ兄さん酷いよー!
 せっかくクコちゃん連れてきたのに!!」

 入って早々はじまった兄弟のやり取りを横目で見つつ、初めて入った部屋を見回す。
 突き当たりにある窓際にデスクが2つ、少しスペースを空けて置かれており、右側の黒を基調とした机は、キッチリと書類やファイルが積まれており…休憩中だからだろうか、机の上の黒いノートパソコンは閉じられている。反対に左は白を基調とした机で、飲みかけと思われるマグカップや開封したままのお菓子と書類が机を上を占領していて…彼のパソコンは入ってすぐの机にある白いパソコンがそうだろうか?近くに別のお菓子が散らかっているので、多分そうだろうなと思うけど。
 そのパソコンのある机は多分共用スペースで、真ん中にポットとティーセットが配置されている。
 そればかりか、よくみれば部屋の隅にはテレビや冷蔵庫なんてものまで設置されてる。…もちろんお仕事用だと思われる機材なんかも置かれているけど。

「そうですね、クコさんがいらしてるのですから…クダリの件は後にいたしましょう。
 そんなことより…クコさん、おもてなしもせずに申し訳ございません。
 どうぞこちらの椅子にお掛け下さいまし」

 散らかってるお菓子のメーカーを解析していると、兄弟のやり取りが終わったのかノボリが共用スペースの椅子を引いてくれたので…恐縮しながらも座ると、左にクダリが笑顔で座り、右にノボリが、失礼いたします。と座った。
 予想通り…サブマスに挟まれた。これはもう、私もサブマスになるしかない。ムリだけど!

「えへへ、クコちゃんと一緒にご飯!」

「そうですね、前々からクコさんとお話したいと思っていたのですが…なかなかわたくし達の時間が合わず、お声をかけることが出来ませんでしたからね。
 今日は昼食を食べながらじっくりお話をいたしましょう」

 謎のプレッシャーを感じながら、今日食べようと思って持ってきていたコーンマヨパンを鞄から取り出す。

「えっ、クコちゃんのご飯それだけ…?」

 信じられないものを見たような表情で私のパンをひったくり、まじまじとひっくり返したりして見ているクダリ。
 一方のノボリはそんなクダリの持っているパンを凝視している。
 …ちょっとそんなにまじまじ見つめないで!恥ずかしいから!!

「その、大変申し上げにくいのですが…そのようなお食事ばかりですと、お体に悪うございます」

「そうだよ、そんなちょっとじゃ夜まで持たないよ!
 …そうだ、ぼくらの分のご飯分けてあげる!!」

 やっと戻ってきたパンを握りしめながら、だって仕方ないじゃないか…料理面倒なんだもん。と心の中で言い訳していると、机の上に鎮座していた大きめのお弁当箱を開けたクダリが、あーん!とおかずの唐揚げを箸で摘まみ、私に差し出してきた!
 どうしようかと悩んだ結果、好意でしてくれてるし…なにより唐揚げがとっても美味しそうなので、意を決して口を開いた。
 ぐいっ。と押し込まれた唐揚げは…絶品だった。

「美味しいです!」

 もぐもぐ、ごっくん。しっかりキッチリ飲み込んでからクダリに感想を告げる。

「…よかったね、ノボリ兄さん!」

「えぇ、気に入っていただけたのなら幸いでございます。
 是非こちらも召し上がってくださいまし」

 相も変わらずニコニコ笑うクダリが何故かノボリに話をふったかと思うと、ノボリが卵焼きを私の口元に持ってきた。
 …ちょっと待って、これはお弁当を作ったのがノボリで、尚且つクダリ同様にノボリが私に食べさせようとしてる感じ?二度目の、あーん。は非常に嫌だけど…唐揚げ超美味しかったし、卵焼きも非常に美味しそう…。

「ささ、召し上がって下さいまし!」

 悩んでいると、思いのほか押しの強かったノボリがグイッと卵焼きを押しつけてきたので食べるしかない。
 思い切って食べた卵焼きは…だし巻き卵で、ふわとろウマー!

「美味しいです!」

「それはようございました。
 …もしよろしければ、今度わたくしのつくった料理を食べに来て下さいましね」

 一瞬表情を緩めたノボリに眼を瞬かせてたが、これ以上無理矢理食べさせられたら適わないので、急いで自分のパンを頬張り頷いた。

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