あおいそら

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 おまえが悪いんだぞ、紛らわしいことするから。
>>大包平

 今日も我が本丸は、平和です。

 後ろから聞こえる騒音を無視して、心の中で呟いてみる。…そう呟いてみたところで平和――静かになるわけでもなく、騒がしい。

「あぁ、これが鶯丸いわく"今日も大包平が馬鹿やってる"っていうヤツなんだろうな…」

 そっと目を見開いて、1人部屋でぼそりと呟くと、開け放った障子の向こうの騒音――大包平の無駄によく通る声が段々近付いているのに気がついた。
 大包平がこの本丸に来てから毎日騒がしい。



 その騒がしい大包平が我が本丸に来たのは、連帯戦でのボスドロップだった。
 兼さんが"ほらよ"と本丸に持って帰ってきた顕現前の刀を受け取り、どこからか現れた鶯丸とともに鍛刀部屋へと駆け込んだ。
 鶯丸は私の隣でそれはそれは嬉しそうにニコニコ笑って、大包平を顕現する様を私の隣でずっと見ていたくらい待ち遠しい様子だった。

「大包平。池田輝政が見出した、刀剣の美の結晶。もっとも美しい剣の一つ。ただ……」

「まってたぞ、大包平!」

 言い終わるか終わらないかという瞬間に鶯丸が、顕現したての大包平に歩み寄り…がっしりと両腕を掴んだ。もちろん、掴まれた大包平は驚いて目を白黒させている。

「鶯丸、先に来てたのか」

「あぁ、つまり俺はお前の先輩になるわけだ。
 …どれ、先輩である俺がお前に色々教えてやろう!」

「あ、おい…待て!引っ張るな!!」

 想像以上にテンションが高かった鶯丸によって、私が大包平に声をかけることもないまま…部屋から出て行ってしまった。
 それっきりこれっきり、見かけはしても喋っていない。が、何故か大包平はチラチラと私を見てくるのだ。そして目が合うと逸らされる。そして、その後なぜか鶯丸と言い争いを始めるという謎展開。
 最初は話しかけようとしていたけれど、その度に勢いよく顔を逸らしたかと思うと全力で走り去っていくものだから…流石に諦めた。



 それっきり、大包平に自ら進んで関わることがなかったわけですが…さっきから聞こえる騒音にいい加減堪忍袋の緒が切れまして。

「大包平!さっきから煩い!!
 鶯丸も何話してるか知らないけど、煽らないで!
 本当にうっさい!!集中できないでしょうが!」

 部屋から出てすぐの廊下で叫ぶと、丁度その大包平がすぐ側まで来ていて、その数メートル後ろには鶯丸がゆっくりと歩いてくるのが見えた。

「そんなことより主!!」

 大包平は私の発言をまるっと無視して部屋に上がり込み、我が物顔で座り込んだかと思うと、無言で座れと合図してきた。
 仕方なく座ると、鶯丸が入り口付近の柱に背もたれてこちらを見ている。

「俺の事は気にするな」

「あ、うん…?」

 相変わらず意味が分からないなぁ。と思いながら視線を大包平に戻すと、どこかそわそわと落ち着きのない様子で私を見ている。
 なんだろう…?私、何かしたかな?それとも鶯丸がやらかした??

「えっと、大包平。
 私に言いたいことでもあるんでしょうか?」

 そう言えば、大包平とまともに話するのはこれが初めてかもしれない。
 一体何の話かと身構えつつ、目をじっと見つめると…何故か顔を赤らめながら大包平は
口を開いた。

「主。主が俺と夫婦になりたいというは本当か?」

「…う、うん??」

 なに言ってるんだこのバ…じゃなかった大包平は。と思いつつ、全てを知っていそうな鶯丸に目を向けると、面白いことになった。と楽しそうに目元を緩ませているではないか。

「ち、違うのか?!」

「違うもなにも…ちょっと何言ってるのか分からないんですが?
 そもそも、何がどうなってそう思われたんです?」

 溜息を付きながらそう言うと、大包平はわかりやすく慌て始めた。

「鶯丸が!アイツが、主はことあるごとに俺に会いたいと言っていた。と…!
 だから、主は俺の事を好いていると思ってだな…。
 っ、クソ!!おまえが悪いんだぞ、紛らわしいことするから!」

 頭をかきむしりながら急にディスられた私は意味が分からず首を傾げる。

「気がつけば俺を見てるし、主が可愛すぎるのが悪い!!」

 そう叫んだ瞬間に私は大包平の腕に収まっていた。
 後ろの鶯丸が笑う声をBGMの中、私が大包平から解放されたのは…初期刀が私の様子を見に来るまで続いたのだった。


2018/07/16


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