あおいそら

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 勝手に人の気持ち決め付けんな。誰が嫌いなんて言った?
>>爆豪 勝己

 彼は私のことが嫌いらしい。
 会うたび怒鳴るわ蹴るわで扱いは散々だし、目が合ったかと思うとすぐ逸らされる。
 出会ってすぐの頃は、諦めずに近付いていた気がするけど…いつの間にか近付くことさえしなくなった。
 そうして、小学校・中学校と何とかやりすごして、高校は別々の学校…私は地元の高校へ、彼は雄英高校へと進学した。

 その日から私と彼は会うことは無かった。の、だけど…。

「あ。爆豪くん…」

「…あ?」

 学校の帰り道、偶然に彼――爆豪くん――に遭遇した。
 どうやら彼も学校帰りのようで、雄英の制服を着ていた。

「あー、久しぶりだね?
 えっと、私小中一緒だった雨草だけど…覚えてる?」

 彼と視線が長時間合っている事に動揺しつつも何とか声を絞り出すと、何故か苦い表情になった…かと思うと急にハッとした表情で、

「危ねぇ!」

 そう突然叫んだ瞬間、私を抱きかかえて地面を転がった。
 意味が分からず目を白黒させていると、爆豪くんが私を抱き起こし…背後を睨み付けた。
 思わずその視線の先を見ると、ヒーローがヴィランと闘っているのが見えた。
 どうやら戦いの最中に破損した壁か何かが飛んできたらしい。

「ここは危ねぇな…。離れるぞ」

 先に立ち上がった爆豪くんが私に手を差し出した。

「えっと、爆豪くん…私のこと嫌いでしょ?
 大丈夫、ここから離れるだけなら一人で出来るし!」

 私を助けてくれた彼には申し訳ないけど、これ以上迷惑はかけられないし…と思って伸ばしかけた手を引っ込めて一人で立ち上がって、速く逃げなきゃな。と踵を返した瞬間、グッ。と手首を引かれた。

「勝手に人の気持ち決め付けんな。誰が嫌いなんて言ったかよ?
 …走るぞ!」

 私の手首を掴んだ爆豪くんが走り出し、引っ張られるように私も走りだす。
 思わず見つめた彼は、なぜか耳が赤かった気がする…。

2018/01/31


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