あおいそら

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自由落下

 悪夢の時間が終わり、少しふらつきながらも地面に降り立った。…思わず心の中で地面に感謝の気持ちを伝えてしまったが、心の中なので問題ない。

「クコの叫び声、超面白かったー」

「あぁ、こっちまで聞こえてたぜェ」

 内蔵がぁあああ。ベルとスクアーロが声を揃えて私を馬鹿にしてくる。…だって内蔵がヒュッ。ってなったんだもん。と思いつつ、ベルの頭をベシッ。っと叩き、スクアーロの横腹をドスッ。と拳を叩込んでおいた。

「う゛お゛ぉい!なにしやがる!!」

「ごめーん、手が滑ったー」

 半笑いの棒読みで言い切ると、スクアーロは私が結った三つ編みを揺らしながら追いかけてきたので、笑いながら素早くザンザスの後ろに隠れる。…虎の威を借る狐状態だけど、気にしない。
 流石にザンザスには迂闊に手を出せないらしく、スクアーロは憎々しげな表情で此方を睨んだ後…舌打ちをしてから、覚えてろよ。と捨て台詞をはいた。
 渋々去って行くスクアーロを見送って、盾にしたザンザスを見上げると…仕方ないな。というような表情で見返されてしまった。

「じゃれ合いも終わったみたいだし、ホテルに戻ってディナーよ!」

 腰に手を当てたルッスーリアが嬉々として言うと、さっさとホテルに向かって歩き始めている。…そして、もちろんドレスコード必須よん。と爆弾を投下した。
 ドレスコード。つまりは正装する必要があると言うこと。
 事前に知っていれば、ヴァリアーの行事とかで使っているパンツスーツを持ってきているのだけど。

「今晩のために作らせたお洋服、着てもらうのが楽しみね!」

 …どうやら、ルッスーリアは全員分の洋服をわざわざ仕立てていたらしい。
 楽しみすぎる様子のルッスーリアは、早くホテルに戻って準備しましょ!と私達を急かす。…急かしたところで走るようなメンバーでもなく、プンプン怒ったルッスーリアが私を持ち上げて…持ち上げて?

「ちょっと、ルッスーリアさん?」

「…なぁに?
 喋ると舌噛むわよ?」

 俵担ぎされた私はルッスーリアに声をかけてみても、軽くスルーされてしまった。…徐々に離れていくザンザス達になんとなく、タスケテー。と手を振ってみると、カッ。と突然ザンザスが目を見開いて凄いスピードで走ってくる。
 予想外の出来事と、なんともいえない恐怖で…ルッスーリアの背中を叩いた。

「スピードあげて!
 …凄い形相でザンザスが追いかけてきてる!!」

「…えぇ!?」

 私の声で振り返ったルッスーリアは、グンッ。とスピードを上げた。…やっぱりザンザスに追いかけられるとか、恐怖だよね。

 結局ルッスーリアに、貴女も走りなさい!と言われ下ろされて、必死で走ったけど…コンパスの差やその他諸々でザンザスに追いつかれ、そして抱え上げられた。…気のせいかもしれないけど、ザンザスの中で私を持ち上げるの流行ってる?
 私を抱え上げて満足した様子のザンザスは、行くぞ。なんて言った頃、突然走り出したザンザスを慌てて追いかけてきたベルやマーモン達が追いつき、結局全員でホテルまで走りました。

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