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▼ 正一
Side.Syouichi
ランボが髪に手を入れた瞬間から、これはマズい!と思ってクコちゃんに手を伸ばしたけど…間に合わなかった。
綱吉君がランボを叱りつけている声が聞こえているが、煙に包まれていくクコちゃんから目が離せなかった。…未来に行ってしまうクコちゃんが心配でもあるし、不謹慎だけど未来からくるクコちゃんも気になってしまう。
そして気になっている間に煙は晴れて、シルエットがハッキリと見えてくる。
「正一、私は珈琲じゃなくて紅茶ねーってあれ?
ここって…沢田君の家?」
キョトンとした表情で辺りを見渡す大人なクコちゃんは、髪が長くなったくらいで大きな外見の変化はなかった。…でも、僕の名前を呼び捨てていた。
これって、もしかして?と、自分の都合の良いように考えてしまう思考を頭をふって、考えるのを止める。
「あの、クコちゃん…?」
「なに、正一…って、なんか正一幼くなってない?」
可愛らしく首を傾げながら返事をしたクコちゃんに、慌てた様子。
「クコちゃん、えっと突然で驚いたと思うんだけど…」
「沢田君が声変わりしてない!
そういえば、そろそろあれから10年経つし…ここ10年前かぁ」
「説明する前に納得されたぁ!!」
相変わらず賑やかなツッコミを入れる沢田君に思わず苦笑しているとクコちゃんが、元々知ってたけど、すっかり忘れてた。と意味深な発言をした。
「…え、どういうこと?」
「あれ、まだ言ってなかったっけ?
私、正一に会う前から正一のこと知ってたよ」
それってどういうこと?と顔が赤くなるのを感じながら、どういう意味なのかを考えていると、突然煙が立ちこめてきて…クコちゃんが見えなくなっていく。
「あ、もう時間みたい…またね、正一」
のんびりしたその声を最後に、完全にクコちゃんは煙で見えなくなった。
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