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▼ ボルサリーノ
正一が私から視線をそらしてチャイムを鳴らそうと指を出した瞬間、ガチャリと玄関が開いた。
「ちゃおっす、正一。
早かったな」
「あ、おはようございます。
リボーンさん」
現れたのは…黒いボルサリーノを被った赤ん坊、ではなく園児サイズのお子様だった。…まぁ、赤ん坊だろうが、そうでなかろうが…結局同じ事だけど。
「そいつが昨日言ってた正一のコレだな」
テクテクと歩いてきたお子様は私を見上げ、右手の小指だけを立てながらそう言い放った。
「ち、ちがうよ!
…そりゃ、そうなれば良いなって…いや、そうじゃなくて!!
この子は同じクラスのクコちゃん!」
あ、私…正一に好かれてたんだ。と聞いちゃいけないことを聞いてしまった感じを味わいつつ、慌てふためく正一を見つめる。…顔が赤くなってなければいいんだけど。
「リボーン!
なにやってんだよ、って…正一、来てたの?」
「あぁ、今来たところだよ」
扉から勢い良く開き現れたのは…正一の友人であろう人、ってかどう見ても主人公で。…正一は友人の出現に驚いて、軽い錯乱?状態から元に戻ったようだった。
「そっか。
じゃあ…どうぞ上がって?」
「うん、おじゃまします」
「…おじゃまします」
慣れた様子で玄関に入る正一の後について、友人の隣を通り抜ける。…チラリと見上げると、友人と目がバッチリあったので軽く会釈して玄関に入った。
正一は、玄関入ってすぐの階段を上がって…可愛い魚型のプレートにTSUNAと付いている部屋のドアをノックも無しで開けた。
「はよっす!
正一もう来たのなー」
「おはよう、山本君に…獄寺君」
部屋にはすでに2人いて、入ってすぐに黒髪で高身長の好青年って感じの人が入江に明るく挨拶した。逆にもう一人の銀髪で目つきが悪い方は正一を睨んでいて…正一が怯えている。
「…おじゃまします」
怯えつつも部屋に入る正一の服の裾を掴みながら私も続く。…いくら獄寺がそういうヤツだって知ってても、睨むように見られるのは、怖い。
「ここ、座れよ」
ニコッ。と言い笑顔で山本は山本の隣を叩いた。…正一はどうやら機材の組み立てがあるみたいで、ケースを開けてゴソゴソしているし、獄寺の隣に座るよりは断然安全そうだ。と思って座った。
座ったけど…ほぼ目の前に獄寺がいて、山本の隣に座った意味が無かった。
「…おじゃましまーす」
なんとなく居心地が悪く、そわそわしていると…ドアが開いて、控えめな声が聞こえた。
ので、自分の膝からドアへと視線を移動させると、友人…もう沢田で良いよね?ちゃんと表札見たし。沢田が赤い髪の大人しそうな雰囲気の子を連れて部屋に入ってきた。
沢田とその子がドアを閉めた瞬間、窓からリボーンが堂々と入ってきて…私の隣に座った。
「これで全員そろったな。
…ってことで、自己紹介だ。
もう聞いていると思うが、コイツが雨草クコだ」
「リボーン、勝手に話進めるなよ…。
はじめまして、僕は沢田綱吉」
「俺、山本武。よろしくな!」
「…っち。獄寺隼人」
「えっと、古里炎真…です」
「…はじめまして、雨草クコです。
その、よろしくお願いします…?」
事前に何を聞いていたのか物凄く気になりながら、自分も名乗った。
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