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▼ 電脳世界
今日はデータだけ作っておきたいから。といって、ヘッドギアというか、ヘルメットのようなモノを正一から受け取る。
「えっと、コレを装着して…あー、僕のベッドに寝転んでもらっていいかな?」
モゴモゴと告げてきた正一に、了解!と頷いて…制服のスカートにシワが付かないように気をつけつつ、謎の装置を頭にセットしてベッドに寝転がる。
おぉ…正一のにおいがするぞ。
「…準備はいい?」
『いいよ』
「スパナに聞いたんじゃないよ…。
クコちゃん、大丈夫?」
椅子に座り直した正一が振り返って私に問いかけたが…何故かスパナが答えるという愉快?なやりとりを挟みつつ…大丈夫か私に聞いてきたので、大丈夫。と言って手を上げて合図した。
目を瞑ると、ブゥーン。と起動音がして…身体が浮くような感覚がした後、いつの間にか私はだだっ広い空間に一人立っていた。
まわりを見てみると…黒い空間に蛍光グリーンのラインが網のように等間隔に引かれている。
『クコちゃん、聞こえる?』
正一の声が聞こえた。…どこから聞こえたのか、キョロキョロと見回してみても全く分からなかった。
「うん、聞こえるよ」
『ちょっと試しに歩いてくれる?』
なんとなく上を見上げながら答えると、今度はスパナの声で…歩いてみて。ということなので、素直に歩いてみる。
足元に本当に地面があるか、いまいち分からないが…恐る恐る足を踏み出してみると、カツン。と靴が鳴った。…どうやら地面は硬質なもので出来ているようだ。
そういえば、視界に入った私の身体は…白いフレアスカートのワンピースを着ていて、ストラップ付きのつま先の丸いパンプスを履いていた。
ゆっくり足元を確認しながら歩きつつ、自分の頭も確認してみると…見えないから詳しくは分からないけど、どうやら普段と同じ髪型っぽい。
「ねぇ、私今どんな見た目?」
『…鏡送る』
再びどこか宙を見ながら問いかけると、スパナから返事と共に…姿見が出現した。
姿見といっても、ただの鏡で装飾も何もない板状のものが地面から垂直に20センチほど浮いた状態で…違和感が凄い。
…まぁそんなことよりも、自分の姿がどうなってるのか。である。
鏡を覗きこむと見慣れた自分の顔が映った。
いや、自分の顔だと思ったけど…ちょっとだけ美化されてる気がする。…この鼻のラインとか。
まぁ、誤差かな?と謎の評価を下しつつ、髪型もチェックする。…こっちも髪の長さがちょっと短いかな?位の誤差だった。
『…よし、ダウンロード完了。
今からクコちゃんにして欲しいことが…って、何してんの?』
「私が自分の見た目確認したいって言ったら、スパナさんが鏡送ってくれたの。
それにしても…これって自分自身の見た目とかそのまま反映されるんだね!」
『クコ、ウチのことはスパナでいいよ。
それから、その姿は正一がせっ――
『うわぁぁあ!スパナ、その話はいいから!』
――また?正一、お菓子ね』
『今度送ってやるから、黙ってて!』
『…イチゴ味がいい』
正一がスパナをお菓子の力で黙らせたが…流石の私でも正一が設定したんだなって分かっちゃった。
そうか、このワンピースとか…正一が…いや深く考えまい。
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