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▼ 箱
『って、そんなことしてる場合じゃなかった。
クコちゃん、今から動作テストしたいんだけど…いいかな?』
正一の声と共に、机と椅子が現れた。…机の上には、四角い箱と鍵が置いてあった。
四角い箱は小さめで…何か模様がはいっていて、鍵穴と思われる穴が一カ所空いている。
鍵はシンプルなデザインで、リングに沢山ついている。…どうやら全部同じ形のようだ。
『その箱を開錠してみてくれる?』
そう言われたので、箱と鍵を手にとって、適当な鍵を鍵穴に差し込み…回す。
回した瞬間、箱が白く光り…何かが飛び出した!
「ガゥ」
…飛び出してきたのは中型犬サイズの謎の生き物で、私を見上げながら首を傾げている。見た目的に雑食か肉食っぽい。
『うん、成功だね』
「…これなに?」
成功だと嬉しそうに言った正一に、見たときから気になっていた事をぶつける。
『この子は綱吉君のナッツを参考に…って、わかんないよね。
…えっと、この子は君のパートナーで一緒に戦ってくれる仲間、だよ』
うわー、ついに正一からツナの話聞いちゃった…。
ボックス兵器?のナッツが元ってことは…この子ライオン系なの?どう見ても犬のような何かだよ。と思いつつ、そうなんだ。と頷く。
頷いた瞬間、私をガン見していたワンコ(仮称)が私の足にすり寄ってきた。…可愛いぞ!
『なついたね』
「あははー。
可愛いね、コイツ」
ぼそりと聞こえたスパナの呟きに、その通りだと笑いながらワンコ(仮称)の頭を撫でてやる。
少し堅めの毛並みで、首回りは少し毛が長くて…わしゃわしゃ撫でると、とても楽しい。
『じゃあ、次はこの箱を開けて…って、もうこんな時間だ!』
存分にワンコ(仮称)を撫でていると、正一が焦ったような声を出した。…そういえば今何時だろう?
『クコちゃん、目を閉じてログアウトって念じてみて?
それでログアウト出来るはずだから』
わかった。と返事をして目を閉じると、真っ暗闇に白い文字で"ログアウトしますか?"と浮かび上がった。…とりあえず言われたとおり、ログアウトします。と心の中で念じる。
すると、この世界に入った時と同じような浮遊感の後、ブゥーン。という音と共に、ベッドの上で寝転んでいる感覚が戻ってきた。
パチパチと瞬きしてから身体を起こし、頭から謎の装置を外すと…正一の部屋は薄暗かった。
「おかえり、クコちゃん」
急に明るくなった部屋に眩しさを感じながら、部屋の電気を付けた正一を見上げる。
「…ただいま?
それで、今何時?」
「もう7時だよ」
壁掛け時計を指さしながら正一は、家まで送るよ。と言ってきた。
『行ってらっしゃい、正一。
…がんばって?』
正一の向こうにあるパソコン画面に小さめに映っているスパナが手を振っている。…あ、これは送られなきゃいけないパターン。
「…ありがとう?」
素直に受け取ることにして、床に置いていた鞄を肩にかけてベッドから立ち上がった。
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