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▼ 実はトリップだった
青空の下、今日もいい天気だなぁ。と空を見上げながら店前を箒で掃き清めて店の暖簾をかける。
落ち着いた赤い地に白い桜の模様と店の名前[桜花亭]が描かれていて、いつ見ても可愛らしい。
斜めになっていないか、汚れは無いか、しっかりチェック。
ここに初めて来たときは、必死に毎日を生きているっていう感じだったけど、今ではもうすっかり慣れたものだ。
「もう入って大丈夫?」
両手を腰に当てながら暖簾を見つめていると、背後から声をかけられた。
こんな早くからお客さんとか珍しいし、しかも男性だ。なんて思いながら振り返ると、 奇抜なファッションで長身、ガタイの良い人がニコニコと笑いかけてきた。
ぼんやりと、どこかで見たことがある気がする。そう、この頭に指している羽根とか、肩に乗ってる夢吉とか…夢吉?
そういえば年号、婆娑羅とか言ってた気がする…なんで今まで気がつかなかったんだろうか。
えっ、私ゲームの中にトリップしてたの?タイムスリップじゃなくって?
頭の中が真っ白になった。
「どうしたんだ?
俺に見とれちゃった?!」
目の前の長身の彼…たぶん前田慶次がブンブンと私の顔の前で大丈夫?と手を振っているのでハッとした。
私は店員で、彼は客だ。
すみません、大丈夫です。と返事して店の奥へと案内しながら、ずっと笑顔でしゃべっている慶次に適当に相槌をうって席に座らせる。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「クコちゃんのお薦めで!」
「かしこまりました。
お先にお茶をお持ちしますので、少々お待ちくださいね」
席に着くまでの間に名乗りあっていたので、名前をちゃん付けで呼ばれた。
まぁ、コイツはこういうヤツだよな。と納得しながら奥に引っ込んで店長というか、おじさんに注文を伝えてからお茶を慶次に持っていった。
この日から、この世界での生活は廻り始めたのだと私は思う。
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