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▼ cinque
スペルビから連絡が来てから数日後、剣帝が負けたという知らせが街中に広がった。…街と言っても裏社会の方だけど。
じゃあ、そろそろ連絡くれるかもしれない。と思って待っていたが…待てど暮らせど連絡なんてきやしない。
流石に痺れを切らした私は、直接文句を言うため…ヴァリアーの本拠地に乗り込んだ。
乗り込んだのは良いが…乗り込み方が悪かったのか、侵入者として迎撃されている。
下町のしがないベーカリー店員の私には、ちょっとキツいな!なんて思いながら、殺されるわけにはいかないので、死ぬ気で避けながらフォークを敵の急所を出来るだけ正確に刺していく。
投げたフォークも、数に限りがあるので…出来るだけ回収しながら進んでいく。
「スペルビ・スクアーロはどこだ!!」
追われ始めてから、逆に開き直ってスペルビを出せ!と大声で叫びながら、勢い良くドアをあけていく。
が、どれもこれも外れで…いい加減イライラしてきて…腹いせにドアを蹴破ると、鋭い剣戟がとんできて…頬が切れた。
「う゛お゛ぉい!待ってたぜぇ…って、んん゛!?」
「ふふふ、やっと見つけたわ…スペルビ・スクアーロ!!」
「…侵入者の女ってのはお前だったのかぁ…?」
「そうなるね。
…そんなことより、連絡が無かった理由、聞かせてもらえる?」
剣を引いたスペルビにフォークを突きつけて、問いただすと…剣帝を倒したのは良いが…事後処理やケガの治療に時間が掛かった。とモゴモゴと答えた。
まぁ、一応納得しておいてあげよう。と頷いて、それで私に伝えたいとか言ってたのは?と再び尋ねる。
「あぁ…なんだ、その…」
「男なんだから、ハッキリ言う!」
さっき以上に視線を彷徨わせて要領を得ないスペルビに怒ると、ゴクリと息を飲んでから口を開いた。
真剣そうな様子に、彼に向けていたフォークを仕舞って、ちゃんと聞く体勢をとる。
「…クコ、俺と結婚しろぉ!!」
「あれだけ迷ってたくせに、まさかの命令系ですか…!?」
「だ、駄目かぁ…?」
とたんにシュン。とした表情になるスペルビにキュン。と来なくもない。
それに、告白だったら嬉しいなぁ…。と思っていたのも事実。…まさか告白飛ばして結婚とは思ってなかったが。
「いいよ、結婚しましょ」
笑いながら頷くと、スペルビは素早い動きで私を抱きしめて頬の傷口にキスを落とした。
「…Ti amo」
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