▼ 熱視線をおくる
気がついたらあった、私の小指からのびる赤い糸は…こともあろうに彼に繋がっていた。
何度も見間違いだと、気のせいだと思おうとしたけれど、それは消えることなく私と彼の小指で自己主張している。
そしてその赤い糸は私にしか見えないらしく、昔友達にそれとなく聞いても見えていない様子だった。
そして私と糸が繋がっている彼、松野十四松は今日も私を無言で見ている。
毎日、というわけではないと信じたいけど、気がついたら電柱の影や屋根の上、草葉の陰から私を見つめている。
十四松くんの目は普段から焦点が合ってないから、最初は気のせいだと思っていたけれど…顔ごとガッチリ向けてくるので、絶対に間違いなく私の方を見ている。
そのことも友達に相談したけど、見てくるだけで害が無いなら放っておけば?と言い放って話を変えられた。辛い。
…というわけで、現在進行形で塀の上にたたずむ十四松くんは私を凝視している訳ですよ。
事前に小指の糸で居場所が分かるとはいえ、無言で凝視されるのは物凄く怖い。
それでいて十四松くんと目を合わせると、お花の幻覚が見えるようになるので合わせたくない。
ので、そっと目をそらして通過することにしている。
「シキちゃん、どこいくの?」
十四松くんが私に声をかけたことに驚いて足が止まる。
…今まで一度も声をかけられたことがなかったのに。
「じゅ、十四松くん…?
と、ととと突然なに??」
「うーんとねー。
…なんでだろ?」
ぐりん、と首を傾げた十四松くんと目が合う。…目が、合う!?
今まで一度も視線が合ったことがなかった十四松くんと、目が合ったことに声をかけられたこと以上に驚いて、口がポカンと開いてしまったのを慌てて両手で隠した。
視界にうつる赤い糸は、今までと同じく私と彼に繋がっていた。
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