▼ 僕を惑わせる、
運命の赤い糸。それは、運命の相手と自分を繋ぐ目に見えない赤い糸。
そんな本当かどうか分からない話、誰が信じるというのか。
そもそも…見えないのに赤いと分かるのは何故なのか、私は問い詰めたい。
「あれ、シキちゃん?」
だけど、その話を嘘だと決めつけることが出来ないのもまた事実で。
今日もまた、偶然だというトド松と遭遇する。
「ほんと、よく会うね」
「そ、そうだね、偶然って怖いね…」
ギュッと糸の絡まった手を隠すように握りしめ、なんとか笑顔を絞り出す。
私の小指に絡まった赤い謎の糸は、触れることも出来ないし、私以外には見えていない。
なにかに憑かれてるのかと何度も思ったけれど、悪いことは…トド松の遭遇率以外は特に何もない
ただ、赤い糸が指から伸びているのが見えるのは、トド松が近くにいる時だけ私の指からトド松の指に繋がっているのが見える。
これってどういうことなんだろう。何度も考えても分からなくて、すっきりしないまま。
「…ねぇ、シキちゃん。本当に偶然だと思ってる?」
「えっ?」
俯いていた私はその言葉に顔を上げると、思ったより近くで読めない表情でこちらを見つめてくるトド松に戸惑う。
偶然以外に何があるというのか、と口を開こうとした瞬間にトド松の手で阻止された。
「これは偶然じゃ無くて、運命っていうんだよ」
私の口を塞いでいない手を私に見せながら不敵に笑うトド松に、不覚にも顔が赤くなってしまった。
だって、トド松の見せる手には赤い糸が自己主張していたから。
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