あおいそら

好きだから、つい

 物心ついたときから私の小指には赤い糸が絡まっていた。
 その糸を辿ると、なぜかおそ松の小指にたどり着く。
 小さい頃は、運命の赤い糸だなんて思っていた事もあったけど…。

「邪魔なんだけど、どいてくれない?」

 道路の端を歩いていたにもかかわらず、わざわざ私の前に立ちふさがっていちゃもんをつける。
 コイツの常套句だ。
 うつむき無言で左によけると、アイツも左に。
 逆に右によけると、アイツも右に。
 バスケのディフェンス?の用にしつこくガードしてくるおそ松に思わず顔を上げて睨付ける。

「何?」

「何じゃなくて、なんで私の邪魔してくるの!」

 フィッと目線をそらしたおそ松に腹が立ってくる。
 今まで何度糸をぶっちぎってやろうと思ったけど…実際切りたくても触れられないので物理的に無理だった。
 それを思い出すだけで腹立たしい。
 子供の頃から会うたび会うたび罵倒されて…どんだけ私のことが嫌いなの?と思う。
 おかげで会わないようにする腕が上がってしまった。
 なにせ、赤い糸の繋がる先にいるので、別の方向へいけば良いのだから。
 それでも偶に会ってしまうのだから、運命とは残酷なものだと思う。
 いや、運命とか信じてませんけど!

「は、何言ってんの?
 邪魔なんてするわけねぇし!」

 目線を盛大に泳がしながらプリプリ怒鳴りつけるおそ松に、あー、ハイハイ。と適当に返事して、スッとおそ松の隣を通り過ぎる。

「ちょっと待て、どこ行くの!」

「え、買い物だけど」

 通り過ぎようとした瞬間、私の腕をガッシリと掴んできたおそ松をギョッと見つめると、慌てた様子で…お、俺もいく!とおそ松はどもりながら叫んだ。
 予想外の出来事に思わず首をかしげてしまう。

「別に俺が一緒に行っても問題ないだろ!?」

 ギッ!と真っ赤な顔で私を睨んだおそ松は、足音荒く歩きはじめた。
 え?と思わず棒立ちしていると、付いてきていない事に気がついたのか…おそ松が振り返った。

「なにしてんだよ、ほら…行くぞ」

 私の右上を見つめながら、ぶっきらぼうに左手を差し出したおそ松に…思わず右手を乗せてしまった。
 その手を嬉しそうに握りしめたおそ松を見てしまい、何故だか急に恥ずかしくなって俯いた。

 視界の端にうつった赤い糸が、一瞬光った…そんな気がした。

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