あおいそら

おうち

 恐る恐る足を踏み入れると、外見からイメージしていたのと同じレトロなお家で、広めの玄関でコソコソと靴と濡れてビショビショの靴下を脱いで、そっと上がると一松がいつの間にか持ってきた服を私に押し付けてきた。
 困惑しながら思わず受け取ると、コッチ。と一言だけ言って廊下を歩いていく一松の後ろをついて行くと、お風呂場にたどり着いて使い方をレクチャーされた。
 そして、ごゆっくり…。とあくどい笑みを浮かべてパタリと出ていった。
 まぁ、お風呂を貸してくれたってことはわかるけど、ごゆっくり出来ない!と内心叫びつつ、ビショビショで気持ち悪いのも確かなので…ありがたく頂戴する。

 素早くシャワーだけ頂いて、タオルで必死に乾かした下着を装着して…一松に渡された服を広げる。
 …紫色のツナギ。
 とりあえず、それを着てみるが…ブカブカ。
 裾とかを上げても意味がないかも。と悩んでいた時に目に入ったのがTシャツ。
 なぜか紫だったけど。
 Tシャツを着て、ツナギの袖を腰に結びつけるとマシになったので、そっとお風呂場のドアを開ける。

「…あ」

「…え?」

 目の前に一松が立っていて、目が合った。
 それだけでも驚くのに、勢い良く目を逸らされてしまったことにも驚いた。
 しばらく一松を見つめていると、遠くから一松を呼ぶ声が聞こえた。
 多分、一松のお母さんだろう。
 ちゃんと説明したのか私の事も呼んでいて、ハッとした表情になった一松は、私の腕をつかんで、コッチ来て。とだけ呟いてスタスタと歩き始めた。
 半ば無理やり連れてこられた先は、今時珍しいちゃぶ台のある部屋で、1回だけ見た事のある一松の兄弟が勢揃いしている。
 チラリと見える台所には、一松の両親がいるみたいだった。

「えっと…コレどういう状況なの?」

「母さんに言ったら、折角だから晩御飯食べてけって」

「そうそう!
 えっと…シキちゃんだっけ?
 俺の隣開けるから隣に来ない?」

 なんか赤い松野くんが隣のピンクの松野くんを足蹴にしている。
 そういえば…前に一松から兄弟の見分け方?を聞いた気がする。

「えっと、おそ松くん?お誘いは嬉しいけど…「俺の隣でいいでしょ」あ、うん」

 スタスタと私の腕をつかんだまま、一松が勝手に座って、腕を引いたので強制的に一松の隣に座る。
 私の左隣が青い服の松野くんなので…え、コレが例のクソ松?と思わず凝視すると、視線に気がついたのか、フッ。と決め顔で何か言い出した。

「フッ…俺に惚れるなよ、カラ松ガール」

 うわー、クサイ!とドン引きすると、一松がどこからか持ってきたバットで沈めていた。
 …確かにクソ松かもしれない。

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