あおいそら

やさしさ

 一松に連れられて数分後、薄暗い路地裏に到着した。
 なんとなく生臭い…。

「本当にココにいるの?」

「…いるよ」

 スッと座った一松の足元に猫が…ごろにゃん。
 私を素通りして、一松に擦り寄って喉を鳴らしている。
 …羨ましい。

 彼に甘えている猫…私を1度も見なかったから、絶対に気がついてないよ…。
 試しに目の前に手を差し出してみる…ギャッ!引っ掻かれた…。

「何やってんの…」

「手、出しただけなんだけど…」

 呆れたような表情で一松がコチラを見て、ホントに影、薄いんだ…。と呟いた。
 聞こえてるぞ…。と内心思いつつ、だから言ったでしょ。と言い返しておく。

「そういや、スタバァで見たのは何松?
 そもそも何しに来てたの?」

「あぁ…あれね。
 長男のおそ松兄さんだよ…。」

 なんでも、一松の行動がいつもと違う…とかで、根掘り葉掘り話を聞かれて渋々話したら、俺も会いたい!とか叫びながらダッシュで出ていったのを必死で止めた。とのこと。
 大変だったね…。そう、ねぎらってあげると彼は微かに疲れた表情で頷いた。

 兄弟が多いと、大変なんだろうね…。

 痛む手を押さえていると、いつの間にか立ち上がっていた一松に、また腕を引かれて強制的に立ち上がって連れていかれる。
 急になんだろう?と思っている間に、近くの公園の水道水を傷口にぶっかけられた。
 水が染みるというか、水圧で傷口が押されて地味に痛い…!
 優しさが痛いよ、一松!

 一向に離さない手を無理やり解いて、水攻めから難をのがれる。

「いつまで水かけてるの!
 ありがた迷惑だよ!!」

「…傷口からバイキンが入ったら大変だからね」

 憎まれ口をたたいているが、少し顔色が良く見える。
 …照れてる?
 案外、優しいところもあるんだ…。と思いつつ、ビショビショになった手と袖口をハンカチでぬぐった。

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