あおいそら

みつかる

 そう、昨日一緒に合コンした六つ子の…誰か。
 もしかしたら、トド松くん?かもしれないし、他の何とか松くんかもしれない。
 でも、紫の服を着てるし…あのウザ松かもしれない。

 なんとなく通った路地裏で、ひっそりと猫と戯れている彼を横目に、足音を忍ばせて横切る。
 大丈夫、猫すら気がついてないよ!

「…ねぇ」

「ひゃい!?」

 急に声をかけられて、心臓が早鐘をうつ。
 絶対寿命縮んだよ、コレ!と内心叫びつつ、出てしまった謎の声を誤魔化すように、何?と返事した。
 それにしても、さっきの声はヤバイ。
 私の記憶からも、目の前の彼の記憶からも消したい…。

「アンタ、昨日の女でしょ」

 昨日の女とは、合コンの話でしょうか!?
 というか、コイツまた私に気がついた…?
 猫すら気がついてなくて、私の奇声でやっと逃げたくらいなのに…。
 私の顔までも覚えてたとは…コイツ、出来る…!と脳内で三文芝居をうちつつ、返事する。

「多分そうだと思うけど…」

「アンタ、また猫被ってるの?
 …ホント、よくやるよね。
 そこまでして相手に嫌われたくない訳?
 俺には絶対無理」

 あっ、コイツ絶対に昨日のクソ松だわ。
 コイツごときに八方美人使わなくていいよね?
 誰がなんと言おうが、私自身が許す!

「あぁ、やっぱり昨日の紫松か。
 他の松だったら申し訳ないなーって思ったけど、無駄なことしちゃったわ」

「なに、紫松って…」

「あっ、そこに食いつくんだ?
 …アンタら六つ子じゃん?
 見分けつく分けないし、そもそも名前覚えるの苦手な私が1回で覚えれるわけない。
 みんな名前に松が付いてたことくらいしか覚えられなかったわ。
 で、アンタ何松なの?」

「…一松」

「いちまつ…。
 アンタ、長男なの?」

「いや、四男。
 四男とか縁起悪いよね…。
 一松って名前なのに、長男ですらないし」

 コイツ…根暗?
 あれだけ散々コケにしやがった癖に…根暗?
 とりあえず、四男の一松。死ぬ気で覚えたぞ…。
 死んでも忘れねぇ…。
 脳内でギリギリと名前を刻みつけていると、一松?がアンタの名前、何だっけ?興味無さすぎて忘れたから、もう一度教えろ。と、のたまった。
 すこぶるイラッとしたが、答えてやった。

「色雲 シキだけど?
 …文句ある?」

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