▼ ぼうりょくはんたい
珍しく帰り道に野良にゃんこを見つけてしまい、吸い寄せられるように後をついていくと…マスクをした松野なんとか君が猫をネコ可愛がりしていた。
松野君と目が合ってしまったので帰ろうとすると、私より素早い松野君が私の肩を掴んだ。
「…もう帰るの?」
顔のほとんどを隠しているマスクと、なんだか濁っているような瞳のせいで何を考えているのか分からなくて怖すぎる。
今はとにかく帰りたい。
「用事を思い付いたので帰ります」
「…相変わらず無駄に正直だよね、シキちゃんは」
肩に置いてある手を退けようとすると、ギリッと食い込むくらいに力を込められる。
なんなの?帰らせろよ!と、負けずに力を込めて手を退けようとするフリをしてスネを蹴飛ばす。
弁慶の泣き所にクリーンヒットした私の黄金の右つま先のお陰で、松野君はスネを押さえながら痛みに悶絶している隙に離脱!
「…僕は一松、覚えとけよシキ」
後ろから聞こえた地を這うような声は、聞こえなかった事にする。
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