あおいそら

約束を守る

 あれよあれよと言う間にトド松とミニスカデート(?)の日が来てしまった。
 正直、超絶後悔してるし、忘れてることを祈ったけど…どうやら無理だったようで、笑顔で約束を取り付けられてしまった、ちくしょー!なんて思ってる間に当日になってしまったわけです。

 とりあえず家にあった短めのスカートに合わせて服を選んで着てきたけれど…猛烈に後悔している。
 あまりにも落ち着かないので、待ち合わせ時間よりも1時間早く待ち合わせ場所についてしまって、こうやって後悔しながらベンチでトド松を待っている。
 早く気やがれ!と内心罵っていると、向こうの方からピンクを基調とした六つ子の誰かが歩いてくるのが見えた。
 ピンクということは確実にトド松だろう。違ったら辛い。


「あれ、シキちゃん…ずいぶん早いね」

 キョトンとした表情で片手をあげて近づいてくるトド松に手を振り返し、苦笑する。

「今日はトド松君より早く待ってようと思ってね!」

 もちろん嘘だけど、そっかー。と頷いてくれるトド松に罪悪感を覚えながらも隣に並んで、どちらともなく歩き始める。
 今日はどこ行くの?と聞いてみたけれど、前回と同じで無計画らしく何をするわけでもなくブラブラと二人でその辺を歩くことになった。

「あ、そうだ…すっかり言い忘れてた。
 シキちゃんのミニスカ、とっても可愛いよ!」

 突然、数歩前を歩いていたトド松がクルリと振り返ってウインクした。
 くそう、あざといけど可愛いくて…ときめいてしまったではないか。
 ときめく胸をそっと押えながら、何気ない風を装って、あ、ありがとう。とどもってしまった。

「ふふっ、ほんと可愛いよね」

 クスクスと笑うトド松から赤い顔を隠すために逸らして、ちょっと意味がわからないんだけど。と少し速足でトド松を追い越す。
 …なんか余計に笑われた気がするけど気にせず歩いていると、あわてて謝りながらトド松が隣に並んだ。
 ふー。と息を吐いて普通の歩く速さに戻して、さっきの事は無かったかのように話しを始める。

「そういえば、クラスの子が新しいポーチ買ったらしいんだけどね、それを買ったのがこの近くの新しく出来た店らしいんだよねー」

「あ、聞いたことがあるかも。
 えっと…レッドショップとかいうお店だっけ?」

「そんな感じの名前だった気がする」

 ゆるふわな感じで会話しつつ、ナチュラルにレッドショップを見つけて入店する。
 名前に恥じない赤い店内で、女子の好きそうなビビットの小物がひしめいていて、少々目にくる。
 最近の若者の流行ってコレか…!と謎の感動を覚えつつ、店内を二人で見て回る。
 時々、このストラップ可愛いよね!とか、コッチとコッチどっちが好き?などと、女友達のような会話をナチュラルに繰り広げるトド松の女子力ってかほぼ女子な事に恐怖を感じつつ、特に何かを買うこともなく店を出たその時、唐突にトド松がラッピングされた袋を私に押し付けた。

「これ、シキちゃんに似合いそうだから…買っちゃった」

 受け取ってくれるよね?と少し俯きながら、はにかんだトド松を見て、受け取らないという選択肢はなかった。
 開けていい?そう聞くと、ニッコリと頷いたので、そっと封を切ると…シンプルな羽根モチーフのヘアピンが顔を覗かせた。
 …正直に言おう、超好みなデザインだ。

「ありがとう、トド松君。
 大切にするね…!」

 毎日付けちゃおうかな…。と、貰ったヘアピンの入った袋を抱きしめた。

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