プリンス・ザ・リッパー(2/2)*
空はほんのりと明るい。
時計に目をやると19:00前。
しかし、仕事柄昼夜逆転なあたし達にとっては07:00前と言う頃だろうか。
今談話室にはあたし一人。ソファに悠々と座りながら、窓の外を眺めている。
みんなはきっとまだ寝ているだろう。ベルだけは昼間にどっか行ってたみたいだけど、どうせまたご当地の殺し屋巡りだろうな。
そんなことを考えながら、手の中に収まっているマグカップを口に運ぶ。
ガチャリ
自分の空間に浸っていると、談話室の扉が開いた。
振り返り見ると、下だけ履いて上半身裸なボスが冷蔵庫に向かって歩く。
あたしのこのご自慢の視力でようく見ると、髪が濡れていることからシャワーでも浴びてきたんだろう。あー、それで上だけ裸か、納得。
そのままボスは中から便の牛乳をとりだし、腰に手を当て一気にソレを飲み干した。
「ぷは〜っ」
豪快な飲みっぷりに少し関心しながら、昨夜の不満を言おうと口を開く。
『ボス?』
「あぁ?何だ雪歩いたのか」
いたよ、いましたよ!
どうやらあたしはさっきまでボスの視界に入っていなかったらしい…
悔しい…けど、今はこんなことで反論するつもりはない。
あたしはさっきまでのボスの世界では空気と化していたことを(嫌々ながら)認めて、更に口を開けた。
ああ?
ボスはあたしの言い分を全て聞いてから喋った。
「昨日のは、アレだ……勢いの、流れだ!」
『へ?』
「元々 あんなガキ共に負けると思ってねーし お前を安々と手放すかよ」
ボスは何かいつもとは違う感じであたしに言った。
「お前はなにがあってもヴァリアーの雪の幹部だからな!雪歩!」
ボスのその言葉にあたしの不安なんかすっとんで即座に消えてしまった。
だけど、あとあとから考えたらあの時ボスはそう言うことで、自分に言い聞かせていたのかもしれない。
あたしはヴァリアーの雪の幹部だって。
****
夜の並盛中学校。
校舎の3階だけが明々と電気が付けられている。
まだ相手の嵐の守護者は見えない。
「逃げて どーすんだか?
どうせ 殺されんのに」
ベルが小さく呟いた。
「あの時計の針が 11時をさした時点で 獄寺隼人を失格とし
ベルフェゴールの 不戦勝とします」
変わらずチェルベッロが静かに答えて、その場の全員が色々な感情を胸に時計を凝視する。
カチ カチ
カチ
カチ
ドガァン
残り一秒というところで時計が派手に爆発した。
「?」
「おまたせ しました 10代目!!
獄寺隼人 いけます」
どんっ という派手な効果音付きで彼はその場に現れた。
なんとも目立った登場の仕方ですこと。
12/02/10