クローム襲撃(1/1)*

 


「うわー 何このチビ
 ムカツク 殺してー」

「やるかい?」

「退屈しててさ」

「だろーね」



窓の向こう側、隣のバルコニーからなにやら声が響く。



……ベル…と………マーモン…?……



ソファから起き上がり窓を開け、そっと顔を出して除くと、確かにベルとマーモンの姿。
ベルはまだ体に包帯を付けた間々でナイフを構えお得意の笑顔だ。マーモンもそんな彼を挑発している。



世界は薄情だ



こんなのヴァリアーでは日常に有り触れていたことなのに、君がいなくなってそれさえも疎ましい。

人が死ぬのなんて当たり前に傍観してきたし、部下なんてコロコロ居なくなるくらいだった。
幹部でも任務で大なり小なり傷ついて帰ってくる時だってあったのに。あのスクアーロも重傷で帰ってきたこともあった。

だけども....幹部が死んだから?スクアーロが死んだから?

あたしが幹部になってからは、あたし以外の幹部7人が死んだことなどなかった。



スクアーロは昨晩のリング戦で……



鮮明に思い出される、昨晩の戦闘の顛末。


昨晩は帰ってきてから涙が涸れるほど、泣いていたことも涙が涸れていたということも解らないくらい、無心に泣いていた。そして疲れ果て泣き寝入りしてしまった。



目が醒めても世界は当たり前のように廻り続ける。



スクアーロが死んだことさえも、 しかたがない と謂うように。日常はやはり日常として繰り返される。



   コンコンッ



部屋の扉がなった。しかし、途端に現実に引き戻される程あたしの思考回路は甘くないみたいだ。



『…………スク……アー…ロ……』



手を伸ばし、ドアノブに手をかけ、右に捻る。そのままゆっくりとドアを引いて開けると、目の前に立っていたのは―――…



「よぉ雪歩
 ひっどい顔してんな」


12/03/02


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