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「あら天愛羅ちゃん!上手くなったわねぇ・・・」
「しみじみいわれると照れちゃいます!」

均等に野菜を切れるようになった愛野と食堂のおばちゃんの仲はまずまず。愛野自身***に守ってもらうための努力は惜しんでいないのだから、改善は当たり前だが

「そろそろ私なしで平気かな?」
「***!」

さりさりさりとジャガイモの皮むきを難なくやりながら微笑む***に愛野はぷんぷんと頬を膨らませ、***はごめんごめん、冗談だよ。と優しく笑う
それに食堂のおばちゃんが仲いいのねぇと微笑ましげにいえば、愛野はさも当然と***にぴとりと近づいた

「ええ!だって私、***と結婚するんだもん。ね?」
「は・・・?」

思わず盗み聞きをやめてカウンターの向こうに姿を表した尊奈門に愛野と食堂のおばちゃんは驚き、***は盗み聞きはいいけどさと苦笑した

「話しに入ってはこないでほしかったな。」
「まさかタソガレドキの人とも会えるなんて!」
「天愛羅、余所見をしない。」
「は、はい!」

間を空けて興奮しだす愛野の頭にキスを落とし、***に対して青ざめて口をぱくぱくと動かす尊奈門に近づけば
尊奈門は***の共襟を軽くつかんて引き寄せ、小声で叫んだ

「組頭に殺されるぞ!」
「なんで?」
「なんでっ!組頭と恋仲なんだろ!?」
「色恋ではなくさ、私はただ天愛羅を守ってやりたいだけだから。」

問題点以外見つかんないと騒ぐ尊奈門を何とか落ち着かせると、***は一度近いうちに説明しにいくからと言うも、勝手口のほうに現れた気配にいや、ちょっと早いっす、ごめんなさいとぎこちなくそちらを振り向いた

「きゃーっ!雑渡さまー!」
「・・・問い詰めるより先に、なに、この子。」

若干不機嫌(殺気だっていた)だった昆奈門も事態を飲み込めない食堂のおばちゃんもあきれ混じりになってしまうほど、愛野の昆奈門への食いつきは目を見張るものがある
思わず尊奈門と***も愛野をみつめ、昆奈門に飛びついてきゃっきゃする愛野は、当初に比べ自然と歳相応に可愛らしく変化していた

「・・・」
「昆奈門様!」

無言で愛野の首をかっきろうとした昆奈門を素早くとめ、あっけにとられている食堂のおばちゃんに断りをいれて昆奈門と二人食堂をでる
なにあの子と間髪入れずに尋ねてくる昆奈門に同郷の子ですと、***は笑った

「・・・女だったときの、かな?」
「はい。」
「そう。・・・なら、少しだけ様子をみるよ。」

ありがとうございますと頭を下げた***は、でもねぇと冷え切った声に思わず息を飲む

「私は***が思うより短気で、嫉妬深い自覚があるからねぇ・・・そんなに、待てないからね。」

暗に殺せという昆奈門に、***は初めて自分が定めている優先順位の、天秤が動く音を聞いた