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「きゃっ・・・!」

キン!と目前で弾き飛ばされた手裏剣に愛野は腰を抜かして座り込み、棒手裏剣を握ったまま大丈夫?と***は愛野を伺う
ひゅんひゅんと鳴らす縄標も、爆ぜるために存在する宝禄火矢も。***にはなんら負ける要素にならない

「目を覚ませ、***!」
「覚めてるよ、仙蔵。」
「・・・ふへ、」

にやぁと長次が笑い、***は思わず長次になにしたの?と愛野に問う
それにやりすぎてわからないと口ごもる愛野は、多分きり丸のことだと小さく口にした

「天愛羅VSきり丸とか、きり丸圧勝じゃん。」
「う、うるさいわね!力の問題じゃ」
「***に暴言を吐くな!!」
「ひぃっ、」

ぶわりと怒気と殺気が愛野に降りかかり、泣きながら助けてとずるずる***にしがみつく
そんな愛野を姫だっこに抱き上げ、小平太。と咎めるように***は呼んだ
それで収まる殺気ではないが、牽制は必要だ

「その女は***を誑かしたっ!」
「同郷の者に優しくする権利くらい、私に頂戴。」
「同郷だと?」
「同郷とは、どういう、」
「天愛羅いこう。」

疑問だけをぽんと置いてスタスタと歩き出す***に答える気はなく、知っている愛野も口を結ぶ
理解など***は求めていないし、それがわからない愛野ではない。お馬鹿な行動はあるものの、頭が空っぽというわけではないのだから
それに、何がきっかけで***が自分の味方ではなくなり、結果どうなるのか。想像に難くない

「***!」
「煩いよ仙蔵。」
「っ、私を見ろ!」

ぐっと***の肩が掴まれ、足が止まる
愛野から仙蔵の顔は見えないが、***は敢えて見ていない

「仙蔵。」
「同郷とはどういうことだ!なぜその女を庇う・・・!」
「仙蔵、私は仙蔵を友だと思っているよ。」

は?と固まった仙蔵に、***の顔には微笑みが
仙蔵にだけみせるように振り向いた***のその顔に、仙蔵は微かに目をそらす
それに見ろと言ったでしょと小首を傾げ、ゆっくりと唇に艶やかな弧を描いて仙蔵の耳元に顔を寄せた

「大切な、ね。」
「***っ、」

あざとい。と思いつつ一緒に顔を赤くする愛野を抱いたまま、じゃあねと長次たちにも笑みを向け
***はスタスタと自室へ戻る

部屋におろされた愛野は愛されなのねとため息をついた

「恵まれてはいるけど、私は恋人一筋だから。」

それを知っていて溺れる彼らは忍びの三禁を理解していない。そう冷めた目でため息をつく***に、愛野は今更ながら***が味方になったことを正解だと確信する

「・・・私を、見捨てないでね。」
「努力をするならね。」

私は優しい人間ではないから。と授業の準備をし始めた***に、愛野は私ゆとりだから限界があるわよと笑った

「ゆとり・・・懐かしい言葉。」
「***もゆとり世代?」
「まあ、一応。携帯はスライドを使ってた。」
「今はそういうのガラケーっていうのよ!」

私はこれ。とスマホをみせる愛野に、***はうわっ、薄い!と顔を緩ませる
愛野の財布やペンケースを懐かしそうに見る***の姿はまるで愛野と同じようで、楽しそうな声に誰も部屋へは近づけなかった