- ナノ -


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 草木の中、まるで岩のように蹲る竜は、呟くように言った。人間たちは今、どうしてる。少女はちょっと首を傾げて、答える。普通だよ。家とか、高い建物がたくさんあって。夜は電気がいっぱいついてるから、街明かりがきれいで。
 少し、眠りすぎたかもしれない。知らない光景が多そうだ。竜はそう言って、自嘲するように口元を歪めた。これから知ればいいじゃない、と少女は言う。何か良い考えがあるのか、目に光を宿して笑いながら。


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