- ナノ -


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 紫色の鱗の竜は、上空を飛ぶ竜に言った。できるなら、僕もみんなのそばで暮らして、一緒に話したり笑ったりしたかったな。
 毒に侵食された沼地に住まうその紫竜は、自らも多くの生き物に害のある物質を身に纏い、内に宿していた。ただ、その成分をごく薄くして調合すると、様々な病に効く薬になるという。
 小さな小さな繋がりかもしれないけど、それでも、誰かの役に立てるのは嬉しいんだ。優しい紫竜はそう言うと、微かに笑んだ。


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