- ナノ -


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 だいたいさ、行ったことない場所、見たことないもの、会ったことない誰かとかに、なんで惹かれるかねえ、と彼女。今ここにあるもんと、いるもんが全てじゃないの。遠くの世界のことなんてあたしにゃ関係ないよ。
 ま、それでも。こうして会ったのも何かの縁。たんと食べていきな。そう言って彼女は、人にとっては巨大すぎる皿に料理を山と盛って竜の前に置いた。ここは人も、竜も食事ができる珍しい食堂。竜は旅の話などしながら、おいしく料理をいただいた。何やかや言いつつ、彼女もふんふんと竜の話を聴いていた。


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