- ナノ -


508

 竜が海の上を飛んでいると、首が長く鰭のある種類の海竜が泳いでいくのが見えた。その背には大きな荷物と共に人間がひとり、乗っている。船ではなく、海竜と海を渡る人間は珍しい。下降して声を掛けると、人間はにっこり笑った。船よりいろいろと大変なことはあるけど、海も空ももっとすぐそばに感じられる。何より、大好きなこいつと海を渡れるのが嬉しくてな。
 海竜も目元に明るい笑みを灯している。竜は頷き、旅の無事を祈って彼らを見送った。


[